天皇と東大 II 激突する右翼と左翼 (文春文庫 た 5-20)
天皇と東大 II 激突する右翼と左翼 (文春文庫 た 5-20) / 感想・レビュー
chanvesa
左右両翼の革命が天皇という基軸の有無を大きな隔たりとしながらも、基底が同根ということは、渡辺京二さんの北一輝論により、イメージはあった。一方で井上日召の捨石理論はやはりテロリズムの限界を感じる。捨石理論における君側の奸というカテゴライズ(「昔から君側の奸と云ふのは、陛下から御信任されて居ればこそ君側の奸であって」(415頁))は、かつての吉野作造の大演説会の理論(「この陛下の赤子に対して個人が勝手に制裁を加へることが是認せられるならば、これこそ却つて乱臣賊子」(33頁))に対応する。
2022/01/01
白河清風
ここでは大正デモクラシーから5・15 事件までを東大の学者、学生を通して捉える。大正デモクラシーで男子普通選挙が行われ、政党政治体制が確立し国民は政治、社会、文化の面で自由主義的な運動、風潮を謳歌してるかというとそう単純ではなかった。外ではロシア革命、辛亥革命、満州事変、内では米騒動、関東大震災、昭和恐慌が起こり、社会は不安定だった。政治家は無策で、腐敗し、若者達は失望を覚え、政府の打倒や国家体制の変革に走った。令和の政治みたいだ。まず共産党が解体され、テロ行為に走った右派も弾圧され軍政色が強まる。
2024/02/08
masabi
地下に潜りつつも活動を広げる共産党は帝国大学にもシンパが見られ教授や学生など知識人も多く左翼が勢力を伸ばした。対する右翼も血盟団事件や五・一五事件で国家クーデターを成し遂げようとする。両者に共通するのは現国家は堕落しているので正さなくてはという信念だ。五・一五事件裁判で兵士は農村の困窮を挙げ、国民の同情を集めることとなった。満州事変などが起こり戦時体制へとなだれ込んでいく。
2015/02/10
リョウ
明治から大正、そして昭和にかけて、東大の学生達の間では右翼運動も左翼運動も活発に行われていた。ただ、本来学問の自由を立てに権力に楯突くこととも想定される教授陣の間では逆に自由に議論できる余地は狭まっていた。東大という国家が主体となって作り上げた大学だからという側面も無視はできないだろう。
2021/07/12
BLACK無糖好き
怒濤の第Ⅱ巻!時は昭和初期、金融恐慌から世界恐慌に至る流れの中で日本国民も貧窮に喘いでいる一方、政党政治や財閥の結び付きによる政治腐敗が蔓延り、左翼も右翼も国家改造革命に実践的な行動へと動き出す。共産党が治安維持法や内部スパイにより壊滅していく中、右翼国家改造論者が社会を引きずり、血盟団事件、五・一五事件へとなだれ込む。ここから軍閥が力を持ち始めまさに歴史の転換点を迎える。興味深かったのは重信房子(元日本赤軍)の親父と血盟団事件の首謀者達との関係、そうだったのか!と思わず唸りました。^^;
2015/03/27
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