占領軍の検閲と戦後日本 閉された言語空間 (文春文庫 え 2-8)
占領軍の検閲と戦後日本 閉された言語空間 (文春文庫 え 2-8) / 感想・レビュー
Miyoshi Hirotaka
米国内の検閲体制がわが国に移植され、日本人は「巨大な檻」に閉じ込められた。死者と正者が共有していた光景は破壊された。わが国に不名誉や不利益をもたらしても処罰されない「報道する権利」を得た放送や新聞は国籍不明の媒体と化した。ジャーナリズムは服従し、検閲との緊密な協力関係を構築。「報道しない自由」が確立し、GHQ解体後もタブーを自己増殖させた。自国を貶める言動、自虐史観の押付け、言葉狩りはこの延長線。わが国の思想や文化を内部崩壊させる方向に作用している。我々は閉ざされた言語空間を自力で脱する時を迎えている。
2024/03/24
おさむ
いま静かなブームの江藤淳が、1970年代末に自ら渡米し、公文書から解き明かした戦後日本における検閲制度の実態。ケントギルバートら右翼が最近、喧伝しているWGIP(ウォーギルトインフォメーションプログラム)の原典がこれ。米軍は戦前から綿密に準備を重ね、かつ検閲を秘匿義務を負わせることで日本メディアを共犯関係にした。「焼跡の菜園雨に打たれおり」この歌が発禁になるほどの微に入り細に入る検閲だった。検閲制度を描いた映画で三谷幸喜の「笑の大学」があったが、本著を読むとあんなに生ぬるいものではなかった事がよくわかる。
2019/09/25
南北
戦後実施された日本での米国の検閲が戦前から準備されたもので、憲法第21条2項の「検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない」と明らかに矛盾しているだけでなく、その後大学教授やマスコミなどで活躍する日本人も多数参加していることで「閉ざされた言語空間」を生み出していくことになります。このことは検閲を担当していたことを経歴で明らかにしている人がいないことでもわかります。放送禁止用語やヘイトスピーチなどもこれが起源と言えます。『「現人神」「国家神道」という幻想』と合わせて読みたい本です。
2018/09/24
roatsu
日本人が自らの手で戦前戦後史を総括する上で不可欠の資料といえる一冊。敗戦後、GHQがその占領下で迅速かつ効率的に実施した敗戦国民として日本人を自縄自縛する精神支配の内幕を解き明かす作品。今日では中央官庁ですら敗戦後のGHQが行った悪名高い検閲も知らない若手がいることを別の書籍で読んで愕然としたが、大学ではせめて一般教養として日本の再出発点で施された国家の去勢と言ってよい企みの史実を教えるべきではないか。占領史を疑うことすらなかった平和ボケの時代に本作品を世に問うた故・江藤淳の慧眼と勇気に感謝する。
2015/12/31
双海(ふたみ)
闇を見た、そんな気がしました。
2014/07/24
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