南洲残影 (文春文庫 え 2-11)
南洲残影 (文春文庫 え 2-11) / 感想・レビュー
nakagawa
負けると分かっていても戦わないといけない時がある。それが西南戦争であり、日露戦争であり、日米開戦だった。日露戦争は奇跡的に勝利はしたが。三島由紀夫の自決にもその思想は現れているのではないだろうか。西南戦争は、明らかに負けると分かっていており西郷隆盛は明らかに分かっており、それは私でもわかる。江藤淳氏は、西郷隆盛の思想ほど大きな影響を与えたものはないという。西郷隆盛はいずれ西洋に呑み込まれて大日本帝国はいずれ崩壊することを予期していたのかもしれない。
2017/09/09
うえ
「それにしても、帝国陸軍は、何故このように複雑な(抜刀隊)の歌を分列行進曲の旋律に採用したのだろうか…「西洋」化しているはずの官軍が、却って薩軍の「抜刀隊」に歩兵の理想を見出だそうとするという倒錯が生じる…洋式帝国陸軍の理想は、ほかならぬ攘夷の軍隊「陸軍大将西郷隆盛」を総帥に戴くもう一つの軍隊である…しかし、正規軍である帝国陸軍、つまりは官軍が、反逆者の軍隊である薩軍を理想とするとはいかなる次第か…二・二六事件は、ほとんど西郷挙兵のその瞬間から、国軍の構造のなかに潜伏していたのではないか」
2015/09/13
Hironobu Takegama
読了。西郷さんの人生を"西南戦争"の時期にフォーカスした作品。唄や資料を使って評論家らしく仕上げた作品と言える。個人的には西南戦争についてのブラッシュアップになり、興味深く読んだ。
2018/02/18
kazy0021
江藤淳氏が南洲翁に寄せる想いを西南の役の時系列に沿って書き綴ったエッセイ。南洲翁とそれに従った士官・兵たちの姿が、当時の電文や紀伝を引用することで生々しく描かれており、その姿を通じて、死して何かを残さんがために立ったという江藤氏の「西南の役」像が浮かび上がってくる。
2017/12/22
riow1983
歌によって西郷隆盛という思想を読み解く。その思想とは大いなる失敗=死への情熱である。城山で自刃する西郷は日本がいずれ西洋の普遍に敗れて崩壊するであろうことを見越していたに違いないと作者は推察する。すなわちエートス無き近代化への痛烈なる批判が西郷隆盛であったと。
2012/02/14
感想・レビューをもっと見る