罪花 (文春文庫 た 8-15)
罪花 (文春文庫 た 8-15) / 感想・レビュー
ミカママ
想像していた内容と大きく外れていた。イヤミスに分類されるべき作品だろうか。男性作家が描いたかのような、女性主人公たちのダメダメさ。オトコもみんな魅力に欠けるし。次いきましょう、次。
2018/10/28
じいじ
全体を漂う空気は、重く、昏く、怖い、そして切ない…6つの短篇。途中、辛さから逃れたいと思ったが、著者の筆力と筋の面白さ引き込まれて、途中放棄はできなかった。70歳の母と二人暮らし、母親の呆け、鬱症状に悩みを抱く娘の気持ちは察するに余りある思いがする。決して他人事ではない、明日の我が身かもしれないからだ。読み終わって重いため息が残った。心理ミステリー・テーストのこれは、女性諸氏に相応しい作品のように思う。
2017/02/22
優希
恋に潜む「罪」を鮮やかに描いていました。性の交情、全てを奪うような激しい恋、結果として生まれた罪。罪の魅力に取り憑かれた人たちの行く末が恐ろしかったです。甘く囁き、快楽を与えられることで味わう歓喜が印象的でした。苦痛や悲しみ、恐怖を伴うのに、堕落の喜びに落ちていくのは、恋の「罪」が人を狂わせるからでしょう。罪深さが生み出す妖しさが美しくも怖さを感じさせる作品でした。
2016/09/08
なる
芥川、谷崎、川端、鏡花、女流そのほか受賞している作家でありながら今まで読んだことがなかった。いずれも独立した6編からなる短編小説で、しっとりと純文学の妖しさに酔わされる。ゆっくりとした導入で死んで行く『灰色の夢』、万引き共犯『フェイク』や被災した少女『夕陽の赤』と来て「4219」の番号につきまとわれる『囁かれた女』も良いけれど、なんといっても『落ちたトマト』が珠玉。衝撃。今までに読んだどの女流作家よりも子宮の匂いがする。その余韻を引きずったまま最後に控える『花に刻め』もまた強烈。凄い本に出逢ってしまった。
2022/04/15
あ げ こ
迸る性の交歓、すべてを奪い奪われる激しい恋、その果てに生まれた罪。罪の持つ魔力に囚われた人々の末路を描いた短編集。罪が与える苦痛は、甘い悦びを伴うもの。悲しみや恐怖と共に、確かに存在する悦び。それを見出した者が浮かべる、歓喜の表情が印象的。「花に刻め」が特にいい。愛する女の心と身体に自分の存在を刻もうとする男。男と決別し、他の男との幸せを望む一方、恐れているはずの男を慕わしく思い、身体を許してしまう女。殺伐とした関係の中に、男が命を掛けて潜ませた真実の愛。選べたはずの、違う結末に馳せる女の思いが悲しい。
2013/10/27
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