銀座界隈ドキドキの日々 (文春文庫 わ 2-4)
銀座界隈ドキドキの日々 (文春文庫 わ 2-4) / 感想・レビュー
kinkin
イラストレーター、デザイナー、映画監督他多くの才能を発揮されて活躍した和田誠氏のエッセイ集。デザイン事務所に入ったことから独立するまでが書かれている。読んでいると当時の芸術界の錚々たるメンバーとのこうゆうが知れる。横尾忠則、粟津清、宇野亜喜良、高橋悠治、篠山紀信他あげればキリがない。高度経済成長の真っ只中で多彩な仕事をして評価された著者は2年前に亡くなられた。しかし手掛けた本はどんな図書館に行ってもあると思う。現代はAIの時代だがアナログのイラストや絵は残ってほしいと感じた。
2022/12/25
Y2K☮
60年代の広告・デザイン界及び銀座の様子を綴ったエッセイ。謙虚の塊だった著者がやがて良くも悪くもはめを外し、秀逸な作品を各ジャンルに残していく。ハイライトのデザインはホントにカッコいい。時を経るにつれて業界も会社も大きくなり、対照的に感性の羽ばたきを妨げぬ大らかな気風がじわじわ損なわれる。他者との距離感や公私のけじめが大雑把過ぎたのは確かだが、だからといって杓子定規に大企業の好む陳腐なルールと無粋な商業主義で染め変えてしまうのは惜しい。経済成長の負の側面を覗き見た気がする。著者のデザインにもっと触れたい。
2023/07/19
one_shot
90年代中頃、大学を出た私は築地辺りにあった広告会社に就職して、毎日銀座からプラプラと歩いて会社に行った。まだ築地市場があり、タイのトゥクトゥクのように速度を落とさず暴走するターレ(築地市場内専用の移動バイク)を避けながら、場外の定食屋で鉄火丼など食べて伊東屋へ引き返したりした。舶来の文房具は見ているだけで楽しかった。上の喫茶店は穴場でいつも空いている。急ぎの仕事がない日は、企画の種を探す名目で銀座の裏道をほっつき歩いた。その30年前、若き巨匠も同じようにほっつき歩いてたんだなぁと楽しくなってしまった。
2023/01/12
本木英朗
日本のデザインストのひとりである、和田誠が1997年に書いた自伝的エッセイが、この作品である。銀座が街の王様で、僕はデザイナー一年生だった――1960年代、憧れのデザイン業界に足を踏み入れた和田誠氏を、胸高鳴る毎日が待ち受けていた――という話から始まる。さすが和田誠先生である。最初から最後まで超面白かった!の一言である。死んでからってところも含めて、また読もうと思う。
2022/04/17
ジロリン
解説で井上ひさしが氏のことをスペインの女優に説明するのに「この人はイラストレーターであり、絵本作家であり、作曲家であり、エッセイストであり、映画監督であり…」と、どんどん<肩書き>が増えていくくだりで(しかもその全ての頭に「優れた」という賛辞がつく!)、改めてその多才さを思い知る。本書はそんな氏がデザイン会社に就職、様々な<本業>と<アルバイト>をこなす様子を語り、「結局、自分は商業デザイナーには向いてない」と退職しフリーになる場面で終わる。その間に関係したクリエイター達のメンツがこれまた凄すぎ…
2019/11/10
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