ペルソナ 三島由紀夫伝 (文春文庫 い 17-9)
ペルソナ 三島由紀夫伝 (文春文庫 い 17-9) / 感想・レビュー
まーくん
本書は三島由紀夫の自決から25年後に著された。そして今年は自決から50年。著者は三島の祖父の代まで遡り、その精神構造の背景を探る。祖父平岡定太郎は播州の片田舎から出て内務官僚となり、原敬に引き立てられ樺太庁長官を務める。父梓も農商務省の官僚、本人(平岡公威)も大蔵省に入るが、僅か9か月で職を辞する。戦前戦後を通じて日本を率いてきた近代官僚体制に支配される世界を日常とし、その日常に背を向けた三島は文学の中に幻想の世界を追う。更には幻想を現実社会に持ち込み、遂に自死を以てその世界を完結させようとしたのでは。
2020/01/20
ばんだねいっぺい
三島由紀夫を知りたくて読んだ。複雑な生い立ちに悲しみを感じ、これから読み方が変わるんじゃないかと予感した。 私淑する原敬の登場には、松本健一とは異なる見方の人間像にそう見るんだなと目を開かされた。
2017/01/26
さきん
三島由紀夫がなぜ、割腹自殺に至ったのか家族関係から読み解いていく。祖父は農民出で樺太庁長官まで出世した官僚で、原敬に頼ってそこまでの地位に至った。父は森林利権と関われるということで、農務省の官僚になり、三島(平岡)氏本人は大蔵省に入省したが、作家志望のためにすぐにやめた。祖母夏子が三島氏の幼少期に強烈な影響を与え、がり勉、文学青年なところはそこで形成されたようである。武士道精神にこだわっていたのも士族出の夏子の影響が大きいと思われる。
2017/03/08
佐島楓
三島の幼年時代の不遇さには胸が痛んだ。三島の才能が最初から評価されたというわけではないこともわかった。読了後、なぜか虚無感がこみ上げる。三島はきちんと人を愛せた人だったろうか? 今はもう、誰にもわからないことだが・・・。
2011/12/16
NY
官僚をキーワードに描く三島由紀夫の「ファミリーヒストリー」。本書が書かれた90年代前半は、政治家と官僚の関係(癒着)が大きくクローズアップ(批判)された。現在に連なる政党政治の先駆けとなった原敬は、平岡定太郎のような献身的な官僚を必要とした。官僚出身の岸信介も然り。三島は官僚的世界を嫌い、文字通り命を懸けたが、それでも戦前から戦後にかけて鉄壁に構築されたその世界はびくともしなかった。今は時代が変わり、いろいろな意味で綻びがみられるが、残念ながら日本はそれ以外の国家運営の有効な仕組みを見つけられていない。
2022/07/30
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