少女外道 (文春文庫 み 13-10)
少女外道 (文春文庫 み 13-10) / 感想・レビュー
かみぶくろ
現在も旺盛に作家活動を続ける80代後半の作者が、70代後半に描いた短編集。その事実だけで既にすごい。全編通じて官能的で妖しさが漂っているんだけど、どこか上品に感じるのは文章の美しさがなせる業なのか。時間や記憶が融け合っているこの感じ、最近読んだ古井由吉さんにも通ずるところがある。
2017/09/04
青蓮
戦前、戦中、戦後を舞台に書かれた作品。どの物語にも薄暗い人の情念が蹲り、しかしその中に絢爛とした妖しい美しさが光る。水に滲む血のように。あるいは鞠の中に隠した指の骨のように。なんとも蠱惑的な短編集である。お気に入りは「少女外道」「有翼日輪」「標本箱」「祝祭」。
2015/02/03
ハタ
表題作「少女外道」をはじめ七つの短編が収録されており、作品のほとんどの主人公が少女である。外道とはその時代の生き方から外れた生き方という意味が解説で解釈されており戦争時代という背景の中、確かに色濃い印象を受けました。この短編集は彼女達の生への戦いの記録だったのだと思います。自分の好きな作品は「有翼日輪」「標本箱」の2つ。その他どの作品も終盤のパラグラフが感慨深い。「凄まじい落日の一刻に逢えた。生と死が水平線でせめぎ合っていた。〜海と空の境は金泥渦巻く戦場であった。」 凄い、、これだから読書はやめられない。
2015/12/10
shizuka
「少女」という言葉に隠されたもの。表裏。陰陽。美しく麗しく、清らかなだけじゃない「少女」。中を開いてみれば、どろどろとした黒い血が流れている。でも少女はその可憐さで周囲の人間をまやかす。いとも簡単に。それは裏切りでもなく悪意もない。少女だけに許された特権。戦前〜戦後と少女も様変わりした。少女の持つ薄汚さは普遍だが、その表現のされ方と受け取られ方と純粋度の質は低下。それは世界の汚れ方と比例する。今は昔の少女達。あなたもこの物語の中にいる。自分が隠していた本性を見つけ、驚愕ののち甘く懐かしい気持ちが到来する。
2016/12/24
カナン
私の中にあなたの中に、「外道」の心は息衝いているのです。赤く透ける蝉の抜殻。焼けた骨に混じる凍て付いた金属と焼かれて月に住んだ兎。翼を広げたフレスコ画。標本箱の三十五番目。白いチュチュを纏う瀕死の白鳥。からころ鳴る桜貝の爪。皆川博子の描く少年少女はいつも暴力的なまでの純度を保っている。そして稚いほどに残酷で怖ろしいほどに甘美なのだ。頁を捲る指が震えて惑う。彼女達の抱くその昂りをどうして清い魂から切り離すことが出来ようか。最後に収録された「祝祭」の終わり七行の描写に息が止まり、瞬間、時すらも確かに停止した。
2019/12/08
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