スニヨンの一生 (文春文庫 450-1)
スニヨンの一生 (文春文庫 450-1) / 感想・レビュー
kawa
日本統治下の台湾で、先住民族高砂族(アミ族)のスニヨン(日本名・中村輝夫)は、志願日本兵として太平洋戦のインドネシア・モロタイ島に派遣されたが、終戦を知らず実に30年に及ぶ潜伏生活を経て奇跡的に故郷に戻った。しかし、祖国日本は失せ、妻は再婚、酒と煙草に溺れ短命の人生だった。実態が良く解らないモヤモヤ感が、戦争の悲惨さを倍加して感じさせる。高齢になっても好印象作を連発する著者、1984年のノンフィクション風作品。
2022/05/23
mj
高砂義勇隊の生き残り、スニヨン氏の生涯。部隊とはぐれた理由はいろいろあるのでしょう。今となっては些末なことです。もし万一、言われているようなはぐれ方だったとしても、台湾の方々にとっては戦う理由がピンとこない戦争だっただけなのかもしれないし。もちろん、アフリカ・アジアの現状を見れば、結果として大義のある戦争だったわけですが。バンドン会議開催なんて、当時は考えられなかったわけだし。結果として、台湾兵の方々は、このア・アの解放に貢献なさったわけです。とにかく、ありがとうございました。
2020/03/22
Mayumi Hoshino
<小野田さんや横井さん以外にも、南国の島にいた日本兵がいた。彼の名は中村輝夫。またの名をスニヨン。高砂義勇隊ーー当時日本だった台湾の原住民から集められた兵士であった。>この本は、既に亡き中村氏のことを、作者の佐藤さんが、中村氏の友人知人に聞いて足跡を辿る形をとって書かれる。色んな人に聞けば聞くほど、本心も、人柄も分からなくなる。「分からない」という立場で描かれるから、ドラマチックな物語を期待してもカタルシスは得られるわけじゃない。が、その姿勢を誠実だと思う。(コメント欄に続く)
2015/04/20
CTC
84年単行本初版、87年文春文庫、佐藤愛子著。スニヨンは台湾先住民族である高砂族の内のアミ族として1919年出生。“中村輝夫”として44年に高砂義勇隊員、出征。74年12月に発見される迄、蘭印モロタイ島に。本書はスニヨンが李光輝として台湾に帰国して10年の後に刊行された。スニヨンは79年に死去しており、著者はスニヨンの妻や戦友らに直話を聞いている。スニヨンと妻には出征まもなく産まれた長男が居り、妻は10年スニヨンの帰りを待ったが、その後再婚。スニヨン帰国後、後夫は妻子をスニヨンの元に返すも複雑な想い交錯。
2016/02/26
くりまんじゅう
台湾高砂義勇隊はジャングルで戦い、生き延びる術を日本人より遥かに身に付けていた。しかし食糧も武器も無く、ただ生存の為だけの戦いになってからも自分で取ってきた食糧を日本人の上官に分けたという。何故スニヨンが部隊を離れたかは分からない。そしてジャングルでの30年。その間に国と自分の名前が変わり、妻子は再婚する。高砂義勇隊も、スニヨンも、30年では無いけれど、スニヨン以外にジャングルで生き延びた人達の事も知らなかったので、厳粛な気持ちになり、日本の良い所も、過去の過ちも、両方知らなければならないと思った。
2019/05/07
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