血脈 (中) (文春文庫)
血脈 (中) (文春文庫) / 感想・レビュー
TATA
中巻に入り、戦争の本格化、それによる八郎の兄弟の相次ぐ死とまさに佐藤家は激動の最中に。全体に暗く厳しい描写が続く。元々放蕩な生活をしていた佐藤家の人々だがそれにもまして戦後の混乱が痛々しい。そして父洽六の死。結局、いかに権勢を誇ったところでその衰えは避けられないということ。晩年のシナの態度には怖ささえ感じる。親子、兄弟の情と人の死と。身につまされるところもあり、読後しばらく呆然と。ただ、まだ下巻あるんだよなあ。
2022/05/31
i-miya
(カバー) 末息子の久、心中死。八郎、サトーハチローとなる、売れっ子詩人、諸所に女。節(たかし)と弥(わたる)、親に無心。紅緑に忍び寄る老いの影。節=広島で、弥=フィリピンで、なくす。生命の輝き、失う洽六=紅禄。(佐藤愛子) T12、大阪生まれ。甲南高女卒。戦後「文芸首都」同人。異母兄、ハチロー。H12、第48回菊池寛賞。
2011/07/20
MIHOLO
シナさんの生き方は時代が違ってたらどうだったんだろう。紅緑さんを好きではなかったと書いてあるけど、本当に逃げるつもりなら逃げられたのでは?と思うけど。八郎さんも好きじゃないけど、節さんはもっと好きじゃない。なんか見栄っ張り兄弟。でも才能があったというか、やっぱり芸術家は変り者なのか。シナさんの「たとえ苦しくとも報われなくとも好きなこと、したいことに向かっているのが一番いいのだ、結果はどうであろうと結局はそれしかない」と考えながら自身の幸せを掴めなかった彼女の虚しさが何とも言えない。
2022/02/07
あまね
戦前・戦中・戦後に続き、紅緑が鬼籍に入るまでが描かれています。八郎、節、早苗、愛子も大人になっているので、青少年期ほどのしっちゃかめっちゃか具合ではないものの、渦巻くものはより黒々としてドロッとしています。上巻でも思いましたが、愛子先生はよく丁寧に細部までさらけ出して書かれたなぁと思います。その答えが中巻にありました。『隠蔽したところでしょうがないという人生を佐藤家の人間は生きてきた。佐藤家においては、嘘と隠蔽は悪徳でさえあった。ありのまま、見えるままにしておいても、人々は真実を見るわけでもなかった。』
2017/08/31
バーベナ
50歳を過ぎ漸く小説が自分にむいていると悟った紅緑。しかし、若いころの自分に復讐されるかのように、次々と息子たちは事件をおこす。そんな彼の晩年は長い・・・最期も長い。なんて生命力が強いのだろう。文句を言うだけで、自分で動かない(そんな発想はない)。変わらぬ夫にじっと耐え、尽くさざるを得ない妻:シナ。娘:愛子が書き手だけれども、とんでもない死に方をした兄弟・親族のことも、全く美化しないため、逆に複雑な愛情・憎悪が際立つ。読むにはエネルギーが要るけれど、それに勝る面白さです。
2013/05/22
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