箱崎ジャンクション (文春文庫 ふ 19-2)
箱崎ジャンクション (文春文庫 ふ 19-2) / 感想・レビュー
hit4papa
雑誌編集者をリストラされタクシー運転手となった主人公。パニック障害を抱え、異なる人生をバックミラーの中に見る日々を送ります。そんな中、別のタクシー会社の運転手が車の交換を持ちかけてきて…。本作品は、アラサー二人の痛々しい非日常が描かれます。彼らの同族嫌悪のような心の動きにイライラがつのります。加えて、嫌な客、別居中の妻の新しい男、ねちっこく絡んでくる同僚、などの言動に、鬱屈した気分に陥ります。暴力衝動が溜まりに溜まって…とはならないのが、暗黒小説と違うところ。現実ってこうだよな、としみじみしたりして。
2022/05/30
京 遊
終始 風邪をこじらせたかのようなテンションで話が進む。会社をリストラされ配偶者とは別居中の主人公。特に就けそうな職もなく、悶々とタクシードライバーとして乗務する鬱屈とした毎日の描写が読み手のイライラを誘う。主人公が患っている精神疾患に苦しめられる様子は さながら渋滞の渦中「ジャンクション」に居る様だ。似て非なる存在の、裏の主人公とのやり取りは互いにとって光明が見出だせず、もはや誰得なのか-現実を生きていても目の前の事にこだわり過ぎて本質を見失ってしまうことがままある。何事も決め付けず余白を持って臨みたい。
2023/03/06
ナチュラ
この小説はけして楽しくはないが、人間の裏の表情、負のオーラを生々しく描いていて 私は大好きだ。 幸せとはいえない 惰性で生きているような 精神的にもかなりまいっている 似たもの同士のタクシードライバー 室田と川上が出会うところで物語は進んでいく。 首都高の渋滞で見る幻覚、罵り合い、灰色の道路と曇天の空、排気ガスで霞む視界が終始脳裏にまとわり着く感覚。 人生に疲れた男たちの生き様が実にリアルだ。
2015/07/05
ひねもすのたり
直木賞を獲ると収入が1億増えると言われているようですが、芥川賞を獲るとこんなタイプの長篇を書かせてもらえるんだぁ~的な作品。 主人公はメンタル不調のタクシードライバー。 突飛な行動をする登場人物たちに引っ張られて話が展開していきます。それを面白いと感じるか否かが評価の分かれ目だと思います。 個人的には改良前の首都高から神奈川方面の渋滞っぷりとか、合流部の詳細な描写を楽しみました。ラスト間際で日産クルー(主人公の乗るタクシー)のFR車独特の挙動を無駄に細々と描写するあたりも好きです。★4
2020/07/01
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タクシードライバーというとデニーロそして夜のイメージだが、こっちのタクシードライバーは晴れた昼下がり、または朝ぼらけに随分と色濃く病んでる。そこに影の存在、川上が出てきて、二人はタクシーを交換し、身分を交換する。その上、別れた妻の恋人を別人のふりをして後部席に乗せるとか…やばい話だなあ。匿名の水面下に自分で降りておきながら、生の感触の不在に悩む姿は、万人に共通するものかもしれない。細かなことだが、「〜が」を使った主語が多い。ガリガリと切り裂くような文章でとても好みだ、私は。
2020/06/14
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