よく死ぬことは、よく生きることだ (文春文庫 ち 2-4)
よく死ぬことは、よく生きることだ (文春文庫 ち 2-4) / 感想・レビュー
奥澤啓
千葉敦子。かつてこの人のエッセイを集中的に読んだ。『ちょっとおかしぞ日本人』をたまたま書店で手にしてから付合いがはじまった。政治や経済に関する記事を英語で書くジャーナリストである。合理主義に貫かれたアメリカ生活。仕事、恋愛、乳癌での闘病。旗幟鮮明な力強い生き方。明晰で簡潔な文章。現在、千葉さんのように、生を貪るように海外で活躍する女性は大勢いるだろう。しかし、彼女の時代では、かなり、人知れず涙をながす日々があったろうと思う。全作を再読した。アメリカ的なものが似合う人だなと思う。英語の記事も読んでみたい。
2014/12/02
よく読む
人はいつかみな死ぬ。それは避けて通れない。どんな心地で死んでいきたいだろうか。死は生の延長にある。生きることは死への準備である。だからこそ、よく死ぬこととよく生きることは同じなのだ。生は死につながっている。/不幸なことは、人生で目的を見つけられずに何となく過ごして死を迎える人たちだ。死に際しても、人生で多くのリスクを背負い、挑戦してきた人は、恐怖に慣れ親しみ、死をそれほど怖がらないのではないか。/一日一日を精一杯生きる。本当はベッドに横たわりたい。それでは何も成就できないから、ものを書いたりする。
2017/02/28
ギダちゃん
松井博さんのツイートからの選本:①死について考えたことがない、というのは、生きることについて真剣に考えたことがない、というのと同じこと(P,9)②たいていの人は「そのうちに」「いつかは」という思いを抱いて「不完全な現在」を生きているものだ(P.228)③命が有限なものであることを深く認識すれば、世間的な成功とか、物的な裕福さとか、ばか騒ぎとかがどんなに意味のないものであるかが、おのずからはっきりしてくる。(P.208)
2013/04/09
dzuka
ニューヨーク在住日本人物書きの方の、癌闘病記。 30年以上も前の癌闘病なので、今の状況とはかなり異なってきているとは思うが、癌に向き合う姿勢というのは、迫力があるものだし、当時の日本の医療の在り方についての、物おじしない提言も、現在においても傾聴に値する。 当時の日本の医療といえば、癌になったら本人にはいうかいわないかが、すごくまじめに議論になったし、病院食というのは、どうしてというくらいおいしくないもの。前者は御伽噺のレベルだろし、病院食も改善されている。こういう方の情報発信がいかに大事かが分かる。
2020/08/19
kanagon88
常に冷静に自分の病状を文章にする筆者はすごい。しかも、じつに読みやすい文章が書ける人だ。ガンという病名と治療方針を患者に言わない日本の病院についてずっと異議をとなえている。自分の母親の時も言わなかったが、あっという間に日本でも本人に言うようになった。
2014/06/01
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