声をなくして (文春文庫 な 38-3)
声をなくして (文春文庫 な 38-3) / 感想・レビュー
星落秋風五丈原
『凍』の著者・沢木耕太郎氏について「自分のことは役者としての沢木耕太郎として作品に登場させ、決して自分のことは一字たりとも書かないナルシストの沢木耕太郎(p84)」著者自身の下咽頭ガン闘病記。だから闘病者の主観が前面に出ていて当たり前だが、客観的な部分もある。自分の思うようにならない体に苛立ち酒を煽る夫を「しょうがないなぁ」と思いつつも優しく見守り支え続けた妻の姿が浮かび上がってくる。「病気との向き合い方を学ぶための闘病記」という硬いイメージでなく「こんな生き方でもいい」と思わせてくれるある人生の記録。
2008/11/12
ろくせい@やまもとかねよし
スポーツ記事などのライターが、声帯を除去したのちに綴る随筆集。解説にある「生きて行く決意をしながら、死を拒むことはない文章」が的を射ているか。文章は「生」に満ちている。
2018/08/18
T
がんの手術で声帯をなくし、酒を飲み続け死ぬまでのおよそ3年の間に書かれたものがメイン。「AV女優」を読んだときも思っていたけど、やっぱり優しい人だ。
2016/08/29
うたまる
下咽頭ガンにより声帯を除去した著者の闘病記。が、声を無くした辛さや不便さを語るだけではなかった。更に鬱を患い、アルコールに溺れ、原因不明の痛みに悩まされる日常を描いていた。正に人生のドン詰まりで、死と隣り合わせの日常だ。繰り返される失禁や脱糞で尊厳ある死など望むべくもなく、幾たびも哀しい笑いを誘う。曝け出された弱さは、開き直りというより道化。しかし、アルコールの酩酊の中で思考は怒りに振れ、諦めに振れながら、生を称え、生きることを謳い上げていた。自分の死後も生きる人たちに、強いエールを送り続けてくれていた。
2016/08/13
けじ
病により死の間際に追い詰められ、見栄も外聞も無くひたすら足掻き続ける人間の性(さが)が悲しくもおかしい。
2013/05/04
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