レキシントンの幽霊 (文春文庫 む 5-3)
レキシントンの幽霊 (文春文庫 む 5-3) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
表題作を含む7編からなる短編集。それらのうち、「氷男」、「トニー滝谷」、「めくらやなぎと、眠る女」は、長さの違う他のヴァージョンを持っている。こうしたことは、かなり珍しいことだと思う。表題作「レキシントンの幽霊」をはじめ、多かれ少なかれ非日常との接点に成立する作品群だ。こうした作品を読んでいると、村上春樹にとっての日常感覚は、通常の私たちのそれとは違っているのだろうかという気がしてくる。彼の長編小説に時として姿を現す非日常の意味も、違った位相で考える必要があるのかもしれない。
2012/09/25
HIRO1970
⭐️⭐️⭐️村上さんの80年代のリメイク及び90年代の作品が7つ入った短編集。翻訳小説を読んでいるかのような読後感でした。どれも短編なのでサラッと読めます。村上ワールドの摩訶不思議な感じはどの作品にも現れていて既読の長編の匂いのようなものは感じられました。村上さん42冊目。
2015/09/27
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
私の中で村上春樹は絶対的に長編の作家だったのだけれど、この短編集はどれもとても好き。 どれもこれも好きすぎて難しいけど「レキシントンの幽霊」「トニー滝谷」「めくらやなぎと、眠る女」が特に良かった。 主人公がおもうのはいつだって目の前にあって手にしているものではなく、もはや永遠に失われてしまった何か。それは人をどうしようもなく孤独にする。孤独はさびしいものじゃなかったり、只管にさびしいものだったりして、悲しみと同義語じゃない、なんてこの人の作品を読むといつも思う。それが好き。孤独は親しいもの、なんて。
2019/06/06
おしゃべりメガネ
今更ながら長篇の面白さは言うまでもありませんが、読みやすさと不思議さ加減が絶妙な味わい深い短編集も捨てがたいです。あとがきにも作者本人が述べているように、それぞれが書かれた時期が違うため、なんとなく雰囲気や作風の違いも感じ取ることができます。表題作は現代の村上作品にも残されている不思議ファンタジー感満載の内容で、春樹さん作品全体に共通する雰囲気が十分に凝縮されています。『トニー滝谷』は映像化もされているだけあって、読めば読むほど、その芸術的な文章にココロを奪われ、『氷男』は独特なホラー感がクセになります。
2015/05/06
ミカママ
再読、あるいは再再読かも。ちょっと後味の良くない作品が続いたので、私の読書の原点(ちなみにW村上が私の原点です)に帰ってみました。やっぱり表題作が大好き。村上さん(これ、おそらく実話だと思う)の他人との関わり方が好き。気分的にちょっと落ちてましたが、これ読んでまた元気になりました。さすが村上春樹!
2014/08/14
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