アメリカン・タブロイド 下 (文春文庫 エ 4-8)
アメリカン・タブロイド 下 (文春文庫 エ 4-8) / 感想・レビュー
ずっきん
JFK暗殺を題材にした超弩級ノアールである。『アメリカが清らかだったことはいまだかつて一度もない』ケネディ兄弟、ホッファ、マフィア、フーヴァーが刻む史実の隙間を埋め尽くし、うごめく悪党ども。主役を張る三人の男たちのそれはいっそ清々しい。心理描写はほぼ無いのにそれぞれの人物リアリティがすごい。昇る。裏切る。堕ちる。鞍替えする。妄執する。ピッグス湾からはもう怒濤のジェットコースター。振り落とされるのはいったいどいつだ!?と手に汗握る。ああ、面白い。エルロイは読みにくいと忌避してた自分の頭をふっ飛ばしたい。
2021/02/18
藤月はな(灯れ松明の火)
あの頃のアメリカは、色情狂のヒモであるジョン(ジャック)・F・ケネディ一家に夢中になって堕ちる所まで堕ちる女のように貢いでいた。だがヒモ共は作り上げたイコンに夢中になりすぎて全てを捨てて自分達だけ綺麗でいようと目論むようになる。捧げた者に裏切られていた時、その愛情はたちどころに憎悪に変わる。誘蛾灯のように人を魅了する力を持ちながらその傲慢さは隠さずに呪いに見舞われたケネディ家。暗殺されたからこそ、神格化されているケネディ家をここまでこき下ろし、悪党共と彼等の意志すらも呑み込んだアメリカ暗部の描写に乾杯
2016/01/08
Richard Thornburg
感想:★★★★ シリーズ第1弾下巻。 下巻ではピッグス湾事件~JFK暗殺直近までの話です。 表社会よりも裏社会での活動をクローズアップしている感じですね。 FBI、CIA、シカゴマフィアの活動に加えて主人公格の人物たちが奔走。 時代の変化、利権の変化から、裏社会で権力を握り続けて暗躍し続ける工作員はおらず時代に弄ばれ、絶えず力関係は変化していく。 まさに「諸行無常」という言葉がぴったりです。
2021/05/23
バ度ホワイト
ケイパーとピートが蹴躓く。ウォードが奔走する。下巻からは3人の関係が逆転し、欲にまみれた弱さや脆さが露呈する。胡散臭さが加速し目まぐるしく展開していくビックス湾、ケネディ家への憎悪。マフィアやフーバー、CIAなど大物たちを振り回しているようで、実は彼らの掌で弄ばれてる男たちの悲哀。
2021/07/01
秋良
再読。無邪気な傲慢さを振りかざすケネディ兄弟と、そんな彼らに魅せられ、やがて憎悪を抱くようになる悪党たち。暗黒LAのデカたちと違い、芯の通った部分のない主人公たちは容易に変節し、裏切り合う。ここで書かれるアメリカの歴史は悪夢をちりばめた舞台のよう。大人になりきれないボイドとヒモのジャックが退場。
2020/09/14
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