グルーム (文春文庫 ウ 14-1)
グルーム (文春文庫 ウ 14-1) / 感想・レビュー
GAKU
狂ったひきこもり青年の自分だけの「世界」での「妄想」と、やがてそれが「現実」を侵し、狂気が爆発しおぞましい事件を引き起こすという内容。休日の午前中に読み始めたら途中で辞められなくなり、3時間半程で450P 強の作品を一気に読んでしまった。「そんなに面白かった?」と問われると、答えようがないのだけれど。主人公の歪み方が半端でなく、現実なのか妄想なのかわからないストーリーが交互に進み、なんか毒気に当てられたように読み耽ってしまった。妄想の中の登場人物は当たり前として、現実での登場人物も変な奴らばかり。
2016/01/11
ネムル
ヴォートランの作品の舞台はいつだってのっぺりとした団地なのだろうか。はぐれ者の怒りは均質な街のなかにより深く隠され、不可視のままに煮えている。そして、その爆発は大地の裂け目と共に幻視される。トンプスンらアメリカ勢とは異なり、スピードと変なうねりがある。ブルシット・ノワール。
2020/10/08
南雲吾朗
狂気の小説を書くのは、アメリカの作家だけだと勝手に思っていた。この小説の作家は、フランス人だ。フランスでもこういうものを書く作家がいるのだと、自分の勉強不足を改めて思い知らされた。 妄想と現実の二重描写で物語は進んでいく。初めは慣れなかったが読み進めるうちに、その世界に入り込んでしまう。登場人物が皆どこかしら狂っている。 小説だと気狂いの心理描写が書かれているので“やばいな”っと予想はできるが、現実にいる気狂いは行動が読めないから怖い。ここ2,3年現実の世界でそういう気狂い増えてきているから本当に怖い。
2017/07/12
Ai
ハイムの妄想は歪みまくっているが、一気通貫された世界は、それはそれで秩序立っているのがおもしろかった。妄想の中のハイムは、12歳のできるホテルボーイだ。この12歳という絶妙な妄想設定がツボ。ハイム以外の登場人物たちの頭の中もたいがいで、みんな狂気と紙一重。
2017/06/07
カズー
狂っている小説である。主人公ハイムは現実と妄想の中で生きている。現実の中では足の悪い25歳の男、激愛する母と暮らしている。妄想の中では、狂ったベトナム兵士、そして色情狂の婦人らに囲まれている。現実で起きた殺人事件に刑事が絡み、そしてハイムは妄想に行き、そして現実に戻っている。ハイムには、少なくとも二つとも事実なのだ。しかし、現実の事件は現実の罪を受けなければならない。ハイムは、そこに抵抗しない。現実など、妄想よりどうでもいいことなのだ。 この本を人に勧めるつもりはないが、狂った世界を見たい方はぜひどうぞ。
2018/08/31
感想・レビューをもっと見る