天の刻 (文春文庫 こ 29-2)
天の刻 (文春文庫 こ 29-2) / 感想・レビュー
じいじ
さすが小池真理子、ぴりりとサビが効いた恋愛小説は好いです。主人公6人の中年女性の恋の相方になったつもりで読んでみた。愉しみ倍増で、目茶目茶に面白かった。6短篇どれも甲乙つけられない出来栄えの作品でしたが、恋の始まりで段階で、愛されることより、ひたすら愛することに一所懸命になる女・多美が、強く心に残りました【無心の果実】。6年前に読んでの再読でしたが、三度目がありそうな傑作恋愛小説です。
2019/12/21
さと
初読みの一冊でした。とらえどころのないものが心の中で蠢くというのが率直な感想だった。誰がどうしたとか、何がどうなったとかではなく、彼女たちを通して、自分にもある"どうしようもなく女だから"の部分をあぶりだされた感じ。この世界をしっかりと受け止めていけるのは年齢もさることながら、体当たりの恋愛をしてきてこそ だからではないかとも思った。ままならぬ恋、身動きが取れない苦しさ、自分の心を黙らせ続けた恋…まったく片付かないドロドロの刻を経験してこそ実感できるものなのではないかとも思った。
2019/05/23
ミカママ
読み終わった今、ただただ、ため息をついてます。なんて美しい、それでいて寂しく切ない恋愛小説集。主人公たちの誰もが同世代なのが、入り込みやすかった要因のひとつかな。彼女たちのほとんどが、まだ40代後半にして多かれ少なかれ「死」を意識しているのが、ちょっと不思議だったけど。一番のお気に入りは、表題作。私自身はまだまだ死は意識できないけど、この作品のおかげで昔の日記や手紙を処分する決心つきました。解説は、なんと贅沢な篠田節子さん。これ一編で、作品になりそうな。満足です。彼女たちの10年後も覗いてみたいな。
2015/02/14
ann
次々と展開される「終の恋」。「死」が蜃気楼のように包むお話ばかり。実はどの話にも共感できてしまったし、なんなら朝から満員電車で涙目になってしまうくらい、気持ちのかさぶたがが気になって。小池真理子氏の恋愛小説は、年月とともに内容を忘れてしまうけど、それがいいと思ってる。それでいいと思ってる。「愛するということ」以外では。
2018/08/08
ぶんこ
40代女性たちの恋愛模様6編なのですが、人生を楽しんでいそうなのは最後の多美さんだけで、他の人たちは「生きてるのか死んでるのかわからない毎日」をおくる。一緒に死のう、一緒に死んでもいい等々の言葉に気分がど〜んと落ち込む。共感できる人が少ない中、表題作の蕗子さんが、手術による麻酔が効いている状態で無意識にうわ言を言っていたのが、学生時代のプラトニックな恋人の名前だったという。手術前に死に支度をしたりという心模様にも共感できて、この作品だけでも読んでよかったと思えました。
2020/01/24
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