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南の島のティオ (文春文庫)

南の島のティオ (文春文庫)

南の島のティオ (文春文庫)

作家
池澤夏樹
出版社
文藝春秋
発売日
1996-08-06
ISBN
9784167561024
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南の島のティオ (文春文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

1話完結で、10話からなる連作短篇集。主人公は表題通りの少年ティオなのだが、物語は彼自身が活躍するわけではない。ティオはあくまでも、物語の語り手に徹し、南の島の彼の周縁で起こったことを少年の視点から見るのである。少年の感性で受け止め、それを少年の話法で語る―これが、この小説の最大の成功の秘訣であり、そうした文体で書ける池澤夏樹の個性をも示している。全篇に南の島の穏やかさと温かさ、太陽と水の煌めきが横溢し、読んでいる私たちまでもが、小説世界に包み込まれてゆく。篇中では「ホセさんの尋ね人」が悲しくも美しい。

2015/01/08

mukimi

古書店で80円の黄ばんだ小さな文庫本に引き寄せられた。読了後、あのとき私は引き寄せられたのだ、と思いたくなる不思議な美しい物語。南の島の少年ティオに案内されて島を巡り様々な人生に触れる。地球が誕生した頃から変わらない自然の中で太陽の光を浴び、風を感じ、深呼吸する、ただそれだけのことが難しい多忙な我が人生。数年前1人で与那国島の民宿に泊まり島を探検した旅を夢のように思い出しながら読んだ。恋人を待ち続けたマリアの話も、最後のエミリオの物語も、心に深く響いた。私、心の本当に大切な部分を使って生きているだろうか。

2023/06/04

いこ

読書中ずっと、暖かい南の島と青い海と美しい星空が目の前一杯に広がっていた。精霊に守られているような、どこか神秘的なその島では、不思議なことが沢山起こる。人を呼ぶ絵葉書、未来を予言するお婆さん、昔は天を支えていた流木、35年遅刻した男、可愛い子だけがかかる病等々。その不思議な話11編をまとめたのがこの本である。今回、池澤夏樹さんの作品を初めて拝読したが、透明感のある実に美しい文章であった。今のわたしの気持ちは、主人公ティオと一緒にこの清々しい島じゅうを駆け回っているよう。この休日が素敵なバカンスに変わった。

2024/02/10

(C17H26O4)

受け取った人が必ず訪ねてくるという絵ハガキのお話の魔法にかけられて、冒頭からこの南の島にすっかり憧れてしまった。人々の自然への畏怖の念があるから不思議が生きているのだろう。大きなウミガメが草色に色を変えた海上の空を渡り、謎の男の人が花火で空いっぱいの絵を描く。星が透けて見える天の者が子供を連れて行こうとする。神秘的でほんの少しの怖さもあるけれど、きらめく海や空や星々がたまらなく魅力的。ホテルの子供ティオ少年の自立心や責任感、子供と大人との距離感も好ましい。去る旅人や発つ親友との別れのお話もとてもよかった。

2021/07/18

ミカママ

久しぶりの池澤作品。「南の島」そして「池澤作品」ということで、はずれるはずはない、と思って読み始めたんだけど、まさに期待通りでした。読みながら、ずっと架空の島だとばかり思って、自分が今まで訪れたことがあったり、住んだことがあったりした島を想定してたんですが、ポナペ島(当時)だったんですねぇ。ポナペは昔、クルーズで途中立ち寄ったような、寄らなかったような。でも島の雰囲気はよくわかります。読み終わったあともしみじみとしてしまうのは、さすが。読んでいる間中、自分もそこに訪れたような幸せな気分になりました。

2013/12/16

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