コルシア書店の仲間たち (文春文庫 す 8-1)
コルシア書店の仲間たち (文春文庫 す 8-1) / 感想・レビュー
ケイ
作者のミラノ在住時代、公的にも私的にも、 というか彼女の生活であったコルシア書店に関わる人達の話がつらつらと書き連ねられている。書店のパトロンヌであったツィア・テレーサ夫人(入口のそばの椅子)がとても魅力的。得体がしれないが惹かれてしまうミケーレ(大通りの夢芝居)、ドイツ人と結婚したニコレッタの親離れの出来なさ(家族)、関係する女性が魅力的なガブリエーレ(女友だち)が、特に印象に残る。ほぼ各話でその死に触れられるのに、その多くは語られない死別した夫の事が、喪失感の果てなさを思わせた。
2018/09/04
rico
慣れないイタリア風の名前がひっかかりなかなか読み進められなかったのに、気が付いたら夢中でページを繰っていた。1950年代のミラノ。カトリック左派の活動拠点、開放区であったコルシア書店。アジアの果ての国からそこに飛び込んだ須賀さんが綴る「仲間たち」との日々。何故だろう、半世紀以上前の異国の人たちが、とても近しく感じられる。でも例えば、ユダヤ人の血をひく少女とドイツ人との結婚の経緯は、先の大戦の傷がまだむ生々しい時代であったことを突き付ける。穏やかにほほ笑む須賀さんの写真。この人が見た世界、もっと知りたい。
2020/05/04
ヴェネツィア
1950年代から70年代にかけて、ミラノの現代文学や思想の最先端の人々と共に過ごしていた須賀敦子の回想。『ミラノ霧の風景』でもそうだが、彼女のエッセイは時に暗く沈鬱でさえあるのだが、街の描写も人との交流も限りない深みと静謐感とを感じさせる。ここにあるのは、音のしない静かで思索的なイタリアだ。
2012/03/16
Lara
昭和4年生まれの須賀敦子氏。昭和33年~46年(29才~42才)まで、13年間過ごしたしたイタリアでのエッセイ集。62才になられてからの著作。過ぎた青春時代を懐かしむかのようだが、時間軸は当時の滞在時にある。コルシア書店を中心にその周辺の仲間たちとの触れあいが、今時とは違う。情景が不思議と心に浮かんで来る。個性的な面々が、皆一生けん命に生きている。
2022/07/13
goro@80.7
今の時代で考える書店ではない事、50年代のイタリアで開いたこの書店は様々な人々が行きかう拠点だったのだ。彼女が夫と出会ったのもこの書店。会社と自宅を往復するだけの身にとってはなんだか別世界に感じるが、登場する人物をここまで書き込めるなんてね、文章はしなやかで温かくそこに居るかのように浮き上がって来る。一つの場所で出会って別れて行った人々、それぞれが愛おしいと感じる。久々に文章を味わって読むような本でした。須賀敦子なるほどです。また別の本を思う次第です。
2022/03/07
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