怖い絵 (文春文庫 く 17-1)
怖い絵 (文春文庫 く 17-1) / 感想・レビュー
やいっち
読書というのは、薄闇の中に灯る蝋燭の焔という命の揺らめきをじっと息を殺して眺め入るようなものだ。読み浸って、思わず知らず興奮し、息を弾ませた挙げ句、蝋燭の焔を吹き消してはならないのだろう。 そう、じっと、焔の燃える様を眺め、蝋燭の燃え尽きていくのを看取る。 それは、まるで自分の命が静謐なる闇の中で密やかに滾っているようでもある。熱く静かに、静かに熱く、命は燃え、息が弾む。メビウスの輪のある面に沿って指をそっと滑らせていく、付かず離れずに。
エドワード
3歳か4歳の頃、ポプラ社の江戸川乱歩シリーズの「赤い妖虫」を読んだ私は、その夜あまりの怖さに眠ることが出来なかった。物語の怪奇、柳瀬茂の描く挿絵の恐怖は今でも忘れられない。20世紀末、長女が小学生の頃、家族で姫路の美術館まで新幹線で「象徴派展」を見に行った。彼女はズラリと並ぶクノップフ、ベックリン、ビアズリー等の妖しい絵画に魅入られるように絵の道へと導かれ、美術系大学へ進んだ。今ではモローとルドンがお気に入りの画家の卵だ。連れて行った親も相当だが、それも血と運命のしからしむ業だったのだと私は思っている。
2014/04/02
三平
久世光彦が恐ろしさを感じてしまう絵画とそれにまつわる記憶を告白していく形の私小説の短編集。その恐ろしさを嫌悪するより、むしろ魅入られていく「私」。読む方もいつの間にか生温い毒にひたひたと浸かっていく感覚にとらわれる。確かに甲斐庄楠音の作品を始め、登場する絵(全てカラーで掲載)も怖いのだが、この物語空間を作り出す久世の筆致は凄い。「汚いはきれい。きれいは汚い。」という言葉を思い出させる本。
2015/12/23
びびとも@にゃんコミュVer2
久世光彦さんの私小説。「怖い絵」というより、絵にまつわる怖い、恥ずかしい、暗い記憶の物語で、引き込まれた。 「隠獣」、「甲斐庄楠音」編は怖かった。
2014/10/07
よみ
薄ら昏い個人的な体験が語られています。再読なのですが、どうやら私は寺山さんの随筆とごっちゃになっていたみたいで、「あのエピソードが…ない!?」と一人でゾッとしていました。久世さんの死との距離とり方みたいなものが寺山さんに似てるなぁと思っていたら、調べて吃驚同い年でした!
2017/06/04
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