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夏の災厄 (文春文庫 し 32-1)

夏の災厄 (文春文庫 し 32-1)

夏の災厄 (文春文庫 し 32-1)

作家
篠田節子
出版社
文藝春秋
発売日
1998-06-10
ISBN
9784167605018
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夏の災厄 (文春文庫 し 32-1) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

最後の1行が最高だ。エンデミックが、エピデミックに飛翔するまさにその瞬間である。小説空間を構築しながら、最後に自らそれを突き破っていく。物語はもはや日本では絶滅したかに見えた日本脳炎が局地的に復活したらという問いに始まる。舞台は埼玉県昭川市。架空ではあるものの、このあたりの典型的な土地柄である。主人公は末端の公務員と、はぐれものの医師、そして熱血看護師の3人。この無力なトリオがまたいい。切迫性と悠長さとが混在する、まさにクライシスの只中を描いてゆくのである。篠田節子さんの、まさに渾身の1冊というべきか。

2018/05/08

ままこ

突如発生した正体不明の疫病。感染率が高く死亡率も高い。なんとか一命をとりとめても重い後遺症が残ってしまう。疫病の広がりと共に人々の心もじわじわと蝕んでいく。淡々と書かれた悲惨な場面も重苦しく胸に迫る。良い面も嫌な面も持ち合わせる登場人物達がそれぞれの立場で感染防止や原因を突き止める為に奮闘する。何かと煩雑な行政、ワクチン関連、差別に偏見様々な面でリアリティがあった。25年前の作品だが新型コロナ騒ぎを予見するような言葉や関連する様子も含まれていた。ズシリと読み応えのあるリアルなハザード小説。

2020/06/18

takaC

上野から約50キロ離れた埼玉県昭川市というのは架空の都市みたいだけど、東京近郊のどこの都市でも現実に起こりそうな怖い話だった。「ヒーロー不在のパニック小説」なるものを見事に書き上げてたと思うよ。結びがまた不気味。今の日本はもうそれから11年後の2015年だけどね。

2015/04/24

goro@80.7

市内で発生した日本脳炎と思われる災禍は本当に日本脳炎なのか。高い致死率を疑い真相を追求しようとする市役所職員、保健所看護師。篠田さん自身が役所勤めの経験からか職員の小西の造形がどこの役所にもいるだろう。嫌々ながらも現場で仕方なく巻き込まれて行くが徐々に熱くなって様が好ましい。局地的なウィルス対応としてはこれが限界なのかと突き付けられる思いであった。1955年に書かれた物語だけどラストの恐ろしさは現在に繋がっている。やはり武漢では何かが起こったのだろう。感染環はどこかにある。今となっては慧眼な物語。

2021/02/22

モルク

埼玉県昭川市で日本脳炎が発生する。日本脳炎にしては流行期の夏ではないし、致死率も高く治ったとしても重度の障害や痴呆といった後遺症を伴うもので、何か変だと気付くがその対処法も不明のままどんどん感染が拡がっていく。バンデミックものであるが、非常に良くできている。保健所、市役所の対応、ニュータウンであるうえの先祖代々いる住民と都会から来た人々との対立そしてなかなか腰を上げない国。そこにはどこかで聞いたことのある「まだあそこで良かった」という言葉も…。リアリティーのある中蚊に刺された。だ、だ、大丈夫か?怖い。

2017/09/01

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