ハルモニア (文春文庫 し 32-4)
ハルモニア (文春文庫 し 32-4) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
凄まじい迫力だ。そして、500ページを一気に読ませる作家の力量にあらためて感心する。素材としての由希こそは特異だが、テーマそのものは一見地味だ。タイトルの「ハルモニア」こそがそのテーマであり、物語は由希を通して、彼女と東野がそこに辿り着くまでの軌跡を描く。その瞬間には、読者自身もまた至高の震えに共振することになる。もっとも、それらを包み込むのはプロローグとエピローグに描かれる究極の寂寥の世界なのだが。本書は音楽の限りのない純粋さと、人間持つ果てしないまでの混沌とを描いて見せた。読後は暫し呆然となる。
2018/12/02
gonta19
新規購入ではなく、積読状態のもの。 恐らく2001年2月の発売直後に購入。 2020/2/21〜2/25 恐らく19年ものの長期熟成本。 脳に器質的障害を受けた由希にチェロの手ほどきをする東野。何もできないと思われた由希が超人的な音楽的才能を発揮するにつれ起こる不思議な現象。購入した頃、まだ本格的にクラシックギターを弾いていなかったので、熟成して良かったんだろう。音楽とは何かを非常にいろいろ考えさせられる快作。
2020/02/25
キムチ
筆者の創作における構成力に嵌ってボリュームを感じさせずの逸品。ネタ的にはよくある❓サヴァン症候群、それに音楽~チェロの突出した才能を持つ美少女を絡ませている。現実的にないだろうと考えたら、小説が楽しめない。とにかく由希の持つ才能と花開く超常世界に上り詰め、東野の故の熱さとコラボする芸術の宇宙に泳ぐのも一考。でも読み終えてみれば、結構に筆者の醒めた視線を感じ、芸術故の限界を見せ切っている‥そこが筆者を好きな理由の一つだけど。
2011/08/21
まるほ
本作品、読了まで約1ヶ月を要してしまいました。決して冗長でつまらない作品ではありません。その逆です。実に重厚で読みごたえのある作品でした。▼後天的に脳に損傷を負い、言語というコミュニケーション能力を失った少女“由希”。由希はチェロと出会い、音楽的な才能を驚異的に発達させる。また由希は、言語に代わる特殊な能力を開花させる。「自分の音とは」「自分の音楽とは」という音楽の根源的な要素と、ファンタジックなミステリー要素がブレンドされた佳作。▼読後感は“圧巻”としか言いようがありません。そういう作品でした。
2019/02/10
エドワード
ハルモニアとは真の音楽。人間は退化して真の音楽を奏でることが出来なくなった。何百年に一度、神の愛した天才のみが真の音楽を奏でられる。現代。ルー・メイという天才チェリストが誕生したが、あえなく死んだ。その魂が、日本の高原の療養所にいる脳障害を持つ少女、由希に降り立つ(?)。平凡なチェリスト東野は、彼女の才能を発見し、伸ばそうと試みる。由希は驚くべき演奏能力を発揮し、同時に異常な精神力まで覚醒させてしまう。音楽とは何か、才能とは何か、チェリストでもある篠田節子さんの音楽への造詣が堪能出来るミステリーだ。
2014/06/19
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