タイル (文春文庫 ゆ 4-3)
タイル (文春文庫 ゆ 4-3) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
実に奇妙な小説である。柳美里の本は、これまでに何冊か読んできたが、それらのどれとも決定的に違っている。ただし、全然似ていないという訳ではない。小説と現実が交錯(とは言うものの、ここに描かれる現実もまた虚構の世界なのであるが)しつつ、現実の側が目的と行く先とを共に喪失している。しかも、それは物語の進行と共に加速度を増してゆくのである。タイルの冷ややかさと硬質さ。そこに流された血の滑りと動物的な匂い。男の覚めた狂気。そうした混沌の中に浮かぶ小説と言うべきか。安部公房の『砂の女』を思わせもする。
2019/03/09
夢追人009
「狂気に理由なし」と感じさせられた柳美里さんのエロティック&黒い笑い&血みどろのホラー小説です。妻に拒絶され離婚したやもめ男が引っ越したマンションの一室で憑かれた様に一心不乱に部屋にタイルを敷き詰め続ける。コンビニで缶ジュースを先に飲んで空き缶で清算したりデパートで水着(赤いパンツ)を試着したまま買ったりしている内はコミカルな笑いで済んでいましたが、男にはとんでもなくヤバイ事をやらかしそうな半端ない異常な気配が出まくりでしたね。不能男の一瞬の変貌が恐ろしく過信と油断が招いた血の惨劇に心が凍りつきましたね。
2019/08/26
James Hayashi
ホラー純文学との設定。一言でいえば「芸術は爆発だ」的なぶっ飛んでる作品。ちとついていけない所もあるが、エロティックなところがあり面白い。案外都会の片隅でこのような事が起こっているのかもしれないと、薄ら寒さを感じた。
2019/10/09
メタボン
☆☆☆★ イッソスの戦いを描いたタイルの上に流れる血。その色彩の鮮やかさに戦慄する。狂気に満ちた作品。
2022/02/07
陽
インポテンツって、こうも冷酷になれるものなのか? 異性にやさしくする男って下心というか、性欲を解消したいと言うことだろうな。健康な男ってアホでそんなことばかり考えているんだろうな。性欲がなくなった男が憧れの女性を殺すという、気分の悪い物語だ。作者は女性と言うことで、作者も屈折しているように思える。
2018/10/24
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