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溺レる (文春文庫 か 21-2)

溺レる (文春文庫 か 21-2)

溺レる (文春文庫 か 21-2)

作家
川上弘美
出版社
文藝春秋
発売日
2002-09-03
ISBN
9784167631024
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溺レる (文春文庫 か 21-2) / 感想・レビュー

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ミカママ

官能的なタイトルに惹かれて手に取ったこちら。作中もカタカナ多用で独特なスタイル。それぞれの短編に出てくる人物たちがどこか頼りなく貧乏くさい。貧乏を貶めるものではない、貧乏くさいのがイヤなのだ。『百年』がよかった。死しても残る相手への想い。わたしもそんなふうに貫けたらな、などと詮ないことを思った。

2021/10/21

ヴェネツィア

8組の男女が「逃げてゆく」短編集。いずれも飄飄とした奇妙な味わいの物語。いかにも川上弘美の小説という感じだ。そして、どこか淋しく哀しい。フェリーニの『道』に似ているようにも思う。篇中の女たちは、いずれもジェルソミーナみたいだ。なお、「百年」は、漱石の『夢十夜』の第1夜を想起させる。

2012/05/26

さてさて

つかみ所のない内容が次から次へと読者を襲うその物語世界が読者の想像力を試しているかのようにさえ感じさせるこの作品。しかし、これこそが万人におもねらない川上弘美さんの何よりもの魅力であり、その作品世界に読者も一緒に「溺レる」ことこそ、この作品を読む醍醐味なのかもしれません。言葉の表現の魅力と、印象的なシーンの魅力、そしてつかみ所のない場面設定の中にいきなり放り込まれ、作品に「溺レる」ことが一番の魅力のこの作品。その独特な作品世界に一度はどっぷりとハマってみたい、そう感じさせてくれた不思議感の漂う作品でした。

2022/04/04

❁かな❁

川上弘美さんは平仮名や片仮名の使い方が上手い。「アイヨク」「ミチユキ」名前も片仮名など川上さんのふわふわした独特の空気感に似合う。大人になった今だからこそ、この愛欲に溺れる男女の物語を存分に堪能できた。川上さんの作品らしく、女性は優しくどこか諦めている。私が読んだ川上作品の中では1番艶めかしい。静かなエロスを感じた。お互い想い合ってても心の底で孤独、寂しさを感じている。その穴を埋めるように愛欲に溺れていく。「アイシテルンデス」それだけのことが言えなくて…。女流文学賞・伊藤整文学賞W受賞の大人の恋愛短編集。

2017/06/22

ケイ

女たちの意図は、男の意思に委ねてしまうこと。男の意のままになるため自らの思考を停止させる。身体も委ねる。自分の頭の中に気づかないふりして、したいことがあるのにぼんやりして、その欲望を男の欲望に変えてみせる。心の中で舌を出しているくせに、自分自身にさえそれを隠し通す。別れさえ相手に委ねる。情を交わす。愛欲に溺れる…。ああいやだ。私は好きな男の横でぼんやりとすごしたりなんかしない。共感できないのに、8つの短編の最後の数行を何度も読み返す。きれいな終わりの文を書く人だ。

2017/11/22

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