蝦夷拾遺 たば風 (文春文庫 う 11-9)
蝦夷拾遺 たば風 (文春文庫 う 11-9) / 感想・レビュー
ミカママ
幕末から明治にかけて、舞台は蝦夷松前藩、時代にもまれ、激動期に生きる(主に)女たちの物語。しなやかで強かな彼女らが愛おしいのだが、『恋文』での「みく」の心の動きがわたしには理解不能だった…女っていったんダメとなると、とことんダメなので。史実が絡むせいもあったか、いつもよりは歯応えのある仕上がり。わたし自身、宇江佐さんの未読はあといくつなのだろうかと、名残惜しい読後感だった。
2021/06/13
ふう
大きな歴史の転換期。わたしたちの目は「できごと」に向きがちですが、そのできごとの陰には当然ながら人々の暮らしがあり、思いがあります。宇江佐さんは、ともすれば見過ごされてしまいそうな、そんな暮らしや思いにあたたかい光をあて、慈しむように描き出します。苦しみや悲しみもあれば希望もあり、失われる命もまっすぐな愛もあり、人々は「生きていた」。そのことを忘れないでほしいと、作中の柄杓星のように、わたしたちに大切なメッセージを送ってくれます。『蝦夷拾遺』宇江佐さんの故郷によせる強い思いがこめられた作品でした。
2023/07/05
もんらっしぇ
改めて表紙を眺めてタイトルに「蝦夷拾遺」と銘打っているのを、このレビューを書く段になって初めて気が付くという情けなさ(>_<)函館在住だった作者が風雲急を告げる幕末の蝦夷地・松前を舞台に歴史的事実を踏まえつつ、動乱のさ中、男女・身分に関係なく平等に降りかかる運命の悪戯に翻弄されながらも懸命に生き抜く、あるいは死んでゆく(>_<)人間模様を描く短編集。どうしようもなく心揺さぶられ切なくなる物語の数々。巻末の「文庫のためのあとがき」にて宇江佐さん自ら述べていますが作者の郷土愛が書かせた作品集だといえましょう…
2022/04/04
kei302
幕末の蝦夷・松前藩を舞台にした短篇集。 「たば風」とは、北西から吹く強い季節風のこと。 西條奈加さんの新作に出てきた最上徳内を扱っている「錦衣帰郷」を読んだ。西條さんの作品とは視点の当て方や年代、立場が異なっていて、「偉くなった」徳内を迎える故郷の人たちの心境が細やかに描かれている。いい作品だ。文字の細かさで他は挫折。インクも薄いのは何故(×_×)目の調子がよいときに再読します。
2022/03/06
も
幕末の蝦夷、松前藩を舞台にした短編集です。江戸の市井ものとはちょっと違って堅苦しい感じがしたけれどすぐに引き込まれてしまいました。訛りのきつい会話も新鮮で楽しめました。表題作の「たば風」と「恋文」が好きかな。ずっと嫌いだったひとに恋文を書くってすんごい難しそうだけど、とっても素敵。右京さんお手柄です。
2016/05/10
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