バルタザールの遍歴 (文春文庫 さ 32-2)
バルタザールの遍歴 (文春文庫 さ 32-2) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
第3回ファンタジーノベル大賞受賞作。佐藤亜紀は初読。タイトルからは、中世ヨーロッパを舞台にした物語だと思っていたが、実際は第2次世界大戦を目前とした時期のウイーンから描き始められるロード・ノベル。メルヒオールとバルタザール(共に東方三博士)の設定は、他を客観化できるという利点は認めつつも、ぜひとも必要な設定だとは思えない。また、悪漢エックハルトも、物語を通俗化させる側面もあり、これももろ手を挙げて賛同しかねるところ。しかし、物語のスケール感や個性には捨て難いものがあり、彼女の他の作品も読んでみようと思う。
2013/04/20
あさひ@WAKABA NO MIDORI TO...
第3回日本ファンタジーノベル大賞受賞作にしてデビュー作。「国際舞台にも通用する完璧な小説」との触れ込みに期待度マックスで臨んだ著者初読み作品だったが、なんと全編にわたってその良さを理解できずに苦痛の読書に。年間1~2冊はどうしても自分には合わない作品ってあるけど、きっとこれがそれ。ということで、自分の理解力不足は棚にあげ、年間ワースト10入り確定ですなf(^^;
2021/05/19
風眠
オーストリア、ハプスブルク家に連なる貴族に生まれ落ちた、ひとつの体を共有する双子、バルタザールとメルヒオール。ナチスが台頭する第一次世界大戦と道連れになるように、頽廃し転落していく貴族の物語。第3回日本ファンタジーノベル大賞を受賞した処女作で、しかも20代で書き上げた作品だというのが凄い。ファンタジーと位置づけるのには、私は納得いかない。重厚で濃密な翻訳物のような文体と構成、心理学、歴史、哲学、美意識、そのどれを取ってもこれは芸術だと思う。洒落た会話、薄暗い威圧感、最後の一文まで私を痺れさせてくれた。
2014/03/14
zirou1984
オーストリア・ハンガリー二重帝国が解体された年に始まり、オーストリア第一共和国がナチス・ドイツに併合されるまでの年月を描くという歴史性を持ちながら、一つの肉体を共有する没落貴族の双子が主人公というファンタジー。西洋の伝統に対する洞察と教養に裏打ちされた文化的描写の緻密さと、猥雑なパリの裏通りから北アフリカの砂漠までを股にかける物語の疾走感。小説でしか描きえない時代と空想の融合を成し得ながら、時に双子の片割れが突っ込みを入れつつ物語を紡いでいくという批評性。そして何より、エンタメとして文句無しに面白い傑作。
2016/03/30
ケイ
分離できない双子の貴族、バルタザールとメルヒオールの自堕落な転落の物語。私には、読みにくく、あまり好みではなかった。
2014/04/18
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