イントゥルーダー (文春文庫 た 50-1)
イントゥルーダー (文春文庫 た 50-1) / 感想・レビュー
hit4papa
ミステリというより人間ドラマとしてよく出来た作品です。昔の恋人から突然告げられた息子の存在。そしてその死。主人公は戸惑いつつも我が子の犯罪容疑を晴らすために奮闘します。大いなる陰謀が明らかになるのですが、これが原発建設に関するもので、昨今沸騰した話題の核心をついています。著者の元日本原子力研究所研究員という経歴を知ると、まるで1999年の発表当時から未来を予見したかのような錯覚を覚えるでしょう。本作品は、冷徹と評されている主人公の再生の物語でもあるのです。ただし、結末については、好き嫌いが分かれそうです。
2020/02/25
むう
1999年の作品とのこと。3.11の福島での事故以前に、原発の危険性を広く世に訴えたかったのでしょうか。ストーリーは実に複雑で、登場人物たちが次々と善人から悪人へと変節し、最後はワケが分からなくなってしまいました(笑)。よく考えられたサスペンスなのに、そういう意味で主旨が少しボケてしまい残念です。終わり方も実に残念…。やはりこの著者さんは、大パニックに対処するシミュレーション小説の方が巧いですねzzz
2017/03/13
siro
高嶋さんの本は初めて読みましたが、好きな雰囲気でした。原発の部分は実際に地震によって大きな被害を目撃した現在では感じる事も多く、引き込まれました。ただラストが少し物足りなかったと感じました。「父さん」と呼び掛けるメールになんとも切ない気持ちになりました。高嶋さんの他の本も読んでみたい。
2013/05/13
AICHAN
図書館本。主人公の息子が交通事故に遭って生死の境を彷徨う。事故が起きるまで男は息子の存在を知らなかった。自分の子という実感が湧かないまま病院に詰める男。しかし次第に息子だと認める自分がいた。そのあたりの男の心の動きが見事に描かれる。男は息子の事故に不審を抱く。やがて、息子が原発建設の行われている地盤を調査していたことを知る。さらに息子がイントゥルーダーであることも…。原発の問題点をえぐり出した問題作として評価を得ているようだが、人間ドラマとしても読み応えがある。高嶋哲夫の作品は当たり外れがあるようだ。
2016/05/22
色々甚平
あまり読まれていないのが勿体無いと言える本だった。ハードボイルドミステリーであり、話も説得力があり、IT企業の話や原発の話も今となってはよりリアリティを感じた。主人公は終盤までずっと緊張感のある状態であり、濡れ場もなく、ただただ死んだ息子の軌跡と仕事の進展を追い続ける。その本はサントリーミステリー大賞受賞作という大賞は文句なしだと思えた。硬派なハードボイルド好き、企業事件好きにはぜひとも読んでほしい一作。
2013/10/20
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