空の穴 (文春文庫 い 50-1)
空の穴 (文春文庫 い 50-1) / 感想・レビュー
とち
初めて読むイッセー尾形さん作品。全9編の短編集です。氏の一人芝居のような老若男女をコミカルに描いた作風なのかと思っていたのですが、静かで穏やかな文体で読後感に少しの切なさを覚える作品でした。全体的に人が持つ孤独感と他人と繋がりたい繋がっていたいという欲求を描いているように感じました。『美しき課外授業』が一番好み。さらりと流れるように出てきた最後の1行に思わずにやりとさせられました。
2013/08/06
あなた
イッセー尾形の「職業」は「ニンゲンをみること」だ。しかも、飲み会で隅っこで飲んでいるような人間の生活、そこにあふれるリリシズムを観察することにある。囲い込まれた日常のなかで不器用な恋愛をくりかえす9つのカップル。知情意ともにいびつだが、「にもかかわず」コミュニケーションの可能性を信じている。そうか、恋愛とは「にもかかわらず」の哲学のことをいうのか
2009/08/01
入江
イッセー尾形さんの舞台みたいな空気感。文章に洗練さはない気もしますが、とんでもないセンス、ものの見方が溢れている作品群でした。特に「誠実なカラス」は面白かったです。拾ったケータイで話が進む設定、メモリーみれば解決でしょ? って気もしますが。「美しき課外教育」のどこまで落ちるんだろうという転落からオチがブラックで笑えます。
2017/02/10
雨に唄えば
99年の短編集にして、意外な傑作。ナンセンスな一人コントをやっていた時代を知る自分からすると、予想外に思ったのは恋愛ものの話。男女の繊細な心の動きがイッセー流に軽快に描かれ面白く読める。最後の話「ガラスのボックス叩く音」は現代でいうSNSに通じる物語。書き込みをする人の心理をズバリ言い当てている一文はちょっとギクリとしました。本腰を入れれば○川賞も獲れるのでは、と思える妙味ありの一冊でした。
2016/02/04
カンパネルラ
一人芸のネタ的なものを膨らませただろうと想像出来るものもあるが、小説としての仕上がりは以前のものと比較してかなり完成されていて、内容的にも面白い。一人芸と違って時間軸をいじれるところで飛躍的に話が面白くなっている
2006/02/28
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