体は全部知っている (文春文庫 よ 20-1)
体は全部知っている (文春文庫 よ 20-1) / 感想・レビュー
おしゃべりメガネ
どこから読んでも、どこをどうとらえても、とにかく360度同じカラーなのが「ばなな」さんです。どの作品も至って‘普通’なのですが、その‘普通’さが読んでいくうちにこの作家さんだけにしか出せない独自の世界観なんだなぁとしみじみ感じます。なんてことない日常の出来事や、キモチの流れなどを巧みに書き綴る今作は清涼飲料水のようなショートショートの13編ですが、僅かな限られたページ数の中にも、しっかり&がっちりと「ばなな」カラーを彩ってきます。やっぱり改めて「ばなな」さんって偉大な作家さんなんだと思い知らされます。
2015/10/24
HIRO1970
⭐️⭐️⭐️吉本さん(漢字)だった頃の15年程前の短編集で13のお話が入っています。当時著者はいろいろと悩みがあったような感じが作品からひしひしと感じられました。題名と同じ短編は無いので、全体を総称して付けた題名のようです。過去の体験を何かの拍子に突然思い出し、それを辿って過去に遡ると今まで気付かなかった真実が見えたり、今までの無意識下の自分の行動に随分影響を与えていた真実に気がつくと言うようなお話がいろいろと載っています。こういう繊細な感じの著者ならではの世界観にふと触れてみたくなる時があります。
2015/11/02
ヴェネツィア
掌編と、それに近い短編を13篇収録。フィクションだが、いずれも作家本人を思わせるような女性が主人公。そのことが、一見ばらばらな物語群に統一感を与えている。物語集のタイトルにあるように、どの作品も多かれ少なかれ「体」が物語の核にあるようにも思えるが、あまり深い意味はないのかも知れない。集中では巻頭の「みどりのゆび」が、とりわけ印象的だ。「ひとりのアロエを助けたら、これから、いろんなね、場所でね、見るどんなアロエもみんなあんたのことを好きになるのよ」と臨終を間際にしたおばあちゃんが語るところはことに魅力的だ。
2013/01/06
黒瀬
日常に慣れて忘れてしまった大切なものの記憶を取り戻し、ふとした瞬間に湧き出る温かい気持ちをそれぞれの物語として具現化した印象のある短編集。中でも巻末に収録されている『いいかげん』が大好き。ウェイトレスと老人による通帳覗き見攻防戦から始まった愛を知り、孤独を埋める物語。自分の中の忘れてしまった温かい記憶はなんだろうと思い出を探りながら、繰り返し手に取る愛読書になりそうです。
2020/04/14
mocha
読んですぐに書いた感想はとても否定的だったので削除した。理性よりも感覚、頭よりも体の言うことを大事にして生きる女性たちは「感性」という言葉を盾に開き直っているみたいで不快だったから。間を空けて思い巡らすと、若い頃の考えの浅い自分が透けて見える。ばななさんを読むとそういう共感の痛みがある。若い頃に読んだなら、ダメな自分を肯定してもらえたかもしれない。今の私には苦かった。
2018/06/18
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