奸婦にあらず (文春文庫 も 18-6)
奸婦にあらず (文春文庫 も 18-6) / 感想・レビュー
優希
一途な愛に心打たれました。井伊直弼の愛人村山たかの生涯の物語です。密偵として幕末の動乱の中を駆け抜ける姿には凛としたものを感じずにはいられません。彦根で忍びとして育ったため、井伊直弼に近づくものの、それが恋仲に発展するのが切ないですよね。襲い掛かる過酷な運命が胸を突き刺します。幼い頃から支えてくれた人を犠牲にし、師は処刑、自分はさらしものになるなんて辛すぎます。桜田門外の変も起きるのですから運命は悲しいですね。井伊直弼の印象も変わります。愛すること、愛されることを考えさせられます。
2014/09/16
onasu
久しぶりに持ち重りのする歴史長編を堪能してきました。 幕末、井伊直弼の朝廷工作に長野主膳と共にあたった村山たか。今般の大河ドラマ「西郷どん」も、ちょうどその辺りで、例によって、直弼は改革を阻止する敵役にされているが、これは権力闘争なんで、どちらがどう、てなものではない。 ただ、安政の大獄、桜田門外の変と続く中、幕府、彦根藩も糸の切れた凧のようになり、活躍した者ほど苛酷な定めが…。 寡聞にして、主膳の求めた志が茫として分からなかったのが心残りだが、たかが心静かに終焉を迎えられたことは幸いだった。
2018/03/20
里季
桜田門外の変で有名な井伊直弼の愛した村山たか女の話。直弼は井伊家十一代藩主直中の十四男であり、「捨扶持にて養われる庶子」である。若い頃よりこれと言ったお役も与えられず、もっぱら外堀端の「埋木舎」で、歌、茶の湯、能、などの稽古と学問をするほかはなかった。たかは、実は、忍びの者として井伊家に探りを入れることを使命とされて送り込まれた女である。あろうことか、彼女はその若殿の直弼と恋仲になってしまう。忍びの者としての使命と恋心に揺れるたか。その心を鎮めようと、たかは、よく弁天さんのお顔を見に佐和山へ走った。
2013/08/17
アカツキ
大社の坊人(忍び)教育を受けているたかは院主から井伊直弼、井伊家の内情を探ってくるよう命を受けて直弼に近づく。首尾よく直弼を虜にしたはいいが、たかもまた直弼に心を奪われてしまい…。村山たか女の存在をを初めて知る。井伊直弼の結末はわかっているにも関わらずハラハラしながら夢中になって読む。どぎつい描写があるわけではないのに状況のせいか二人の心情描写のおかげか官能的に感じた。どれだけ愛し合おうと側室にもなれないたかの身分、境遇が切ない。
2022/01/01
かめゆき3
京都に旅行に行った時に、たまたま寄った金福寺で村山たか女を知りました。 残された資料やお位牌を見て、紹介されていたこの本を購入しました。 井伊直弼はもちろん知っていました。 でも、幕末維新と言うと、新撰組とか坂本龍馬とか、安政の大獄以降の人ばかりで、井伊直弼がどんな人だったか知りませんでした。 親しい人も愛する人もすべて亡くしたたか女。 壮絶な人生だと思います。 でも、晩年、心穏やかに過ごされたという事で、すごくほっとしました。 歴史をもっと知りたくなりました。
2017/10/28
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