謝々! チャイニーズ (文春文庫 ほ 11-3)
謝々! チャイニーズ (文春文庫 ほ 11-3) / 感想・レビュー
ntahima
旅は好きだし旅本もよく読むが、現地の人から見れば幻想と思い入れの入り混じった感傷に過ぎまい。人生が変わるとまで思った藤原信也『印度放浪』もインド人が読めば笑止であろう。でもそれで良い。旅は検証ではない。通り過ぎる者だけが持ち得る思いもある。「私は中国に恋していた~」で始まる本作は韓国に恋していた当時を思い出させてくれる。見知らぬ国に恋するには若千の無知・無謀と充分な気力が必要である。だから、瑞々しい旅の記を読む度に~旅に疲れた自分に悔悟の念を抱きつつ~惹かれるのだと思う。もう一度、遠く旅立つ勇気がほしい。
2012/05/31
James Hayashi
中国海岸沿いの旅行記であるが旅行記の記述にそぐわず、出てくる人々が強烈である。著者の作風でバスの運ちゃんを風間杜夫似や、泉谷しげるなどわかりやすく表現。イカサマの博打打ち、バス集客のサクラ、ベトナムへ密航、自分も路上で寝た広州駅前とそこにたむろす人々。珈琲店の売春婦、路上で全裸の女、少林寺の気功団、列車のゴミ箱の中身を窓から投げ捨てる清掃員。正直同じ人間に思えない。中国人という特殊な生き物。悪い意味でなく面白い。規格外の彼等。米原万里の書評にあったが、期待以上の面白さだった。
2016/10/31
Shoko
1993年から94年の中国華南の地。熱気溢れる中国の姿。著者が巡った華南各地で出会った人々は、改革開放という洪水の中を必死に自分の力で泳ぎ抜こうとしていた。確固たる目的を持って、(家族、家、故郷)そのためには手段を選ばず、「自分は生きるのだ」という強い意志を貫く、中国の人々の強さ。そして、出会ってすぐに家に招待してご飯をご馳走する、という「もてなしの心」も印象的だった。 ちょっと乱暴な意見かな、と思うところもあったけれど、面白く読んだ。あとがきで、ちゃんとお母さん孝行しておられて、ホッとしました。
2016/02/10
makimakimasa
本編2ページ目から文章がもう格好良い。「旅はギャンブルに似ている。バスに揺られて知らない町に行く時はいつも、サイコロの目を固唾を飲んで見つめている様な気分だ」。これは読書にも言える。そして読者は賭けに勝つだろう。南方講和を機に改革開放の夢に沸く中国華南地方、その風景の中を窓全開で風を受け流れ行く著者、そんな両者の青春時代が交錯。「中国人は私の学校」という著者は、あくまで国でなく人にこだわる。突き付けられるのは「生きる実感」。但しその原動力は個の自由でなく家、そこは独りで生きたい著者と相容れない。
2020/03/13
羊の国のひつじ
90年代の南中国の海岸線を旅したときの紀行文。どの街での出会いもそのときの中国という国をそのまま反映しているよう。家に呼び、ご馳走してくれるホスピタリティに感動することもあれば、日本に行く手続きを頼まれることもあり、旅は波乱万丈。この著者の語る中国や人々がすごく好き。ベトナムに不法入国した話は笑えました(笑)中国に行ってみたい気持ちがまた一段と高まる内容だった。
2020/08/23
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