タンノイのエジンバラ (文春文庫 な 47-2)
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タンノイのエジンバラ (文春文庫 な 47-2) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
タイトルに魅かれて。4つの独立した短篇から構成される。ただし、その4篇には共通点があり、それは主人公(男2人、女2人)が、いずれも30歳前後であり、しかも彼らは等しく、いわゆるまっとうな定職に就いていないこと。「バルセロナの印象」の主人公(男・語り手)は、それなりに裕福そうだが、職業(?)がクイズの問題作成となんだか危なっかしい。それは畢竟、彼らの社会との距離の置き方とスタンスによるもの。そして、同時にそれは作家自身のそれでもあるのだろう。この不安定感とそれゆえの自由感が、これらの小説の価値に他ならない。
2017/07/29
かのこ
お借りした本。長嶋有さん、芥川賞受賞後第一作目の短編集。タンノイのエジンバラ?少々とっつきづらいタイトルになかなか内容をイメージできなかったけど、蓋を開けてみれば設定が好みなお話ばかり。(突然隣家の女の子を預かる事になる男、深夜に姉と実家に忍び込む…などなど)主人公たちは皆同じような年代と推察され、作中にも同じキーワードが散見される。この年代の長嶋有さんに刺さってた事たちなのかな。表題作の主人公の(悪い意味ではなく)冷えた視点に、ああ長嶋有さんだなあって思う。独特の雰囲気を感じ取れるようになって嬉しい?
2018/02/09
アマニョッキ
「どうしてグーフィーは二足歩行でミッキーとも会話できるのに、プルートは四つ足で歩いてミッキーに飼われているんだろう」「そんなの決まってるじゃない。プルートには彼女がいないからだよ。一人だけ彼女がいないのに、皆と一緒に二本足で歩いていたら、やりきれないじゃないのよ」
2020/05/13
アマニョッキ
読友さんが「読みたい本」に登録していたのをみて、つられて再読。初期の長嶋有は今よりすこしだけ「かっちり」している印象。短編4作品。どれもいいが、「バルセロナの印象」は特にいい。もう今の若者にとってはルパン三世といえば山田康雄ではなく栗田寛一なのだろうなと思いながら読む。いや、もっと書くべきレビューあるだろう。いや、あるんだけどそれは書かなくてもいい。タイトルも全部いい。「三十歳」なんて、ありきたりだけどそれ以外にタイトル見つからないぐらいにいい。このレビューで何か伝わるのだろうか?それもまぁ、いい。
2017/09/30
hit4papa
そこはなとなく寂しさが漂う短編集です。どの作品の背景にも不倫があるゆえに、当事者や周辺の人々の痛みを感じてしまうからでしょうか。ことさらに暗くはありませんが、直接に描かれていないことを想像してしまうと、ちょっとキュンとなったりします。主人公たちが、淡々としているがゆえに、かえって気持ちがざわきます。
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