新装版 波の塔 (下) (文春文庫) (文春文庫 ま 1-122 長篇ミステリー傑作選)
新装版 波の塔 (下) (文春文庫) (文春文庫 ま 1-122 長篇ミステリー傑作選) / 感想・レビュー
Nozomi Masuko
波の塔下巻。新任検事と被疑者の妻の悲恋を描いた異色の恋愛小説。上巻で明かされなかった主人公が恋仲にある女性の正体は、政治家絡みの情報ブローカーで、自身が捜査に当たる被疑者であったー。検事役所の汚職事件に迫る描写も多かったので、ゴテゴテの恋愛小説って感じはなかったけど、いつもの作品と毛色が違ったので新鮮だった。もうちょい粘性のある絡みシーン欲しかったけど。笑。
2016/05/20
きのこ
堪能。芥川賞作家の視野の広さを堪能。深大寺と富士の樹海を名所に押し上げた作品。深大寺そばを食いたくなった。
2018/08/02
YUUUUMI
タカオ・ヨリコ・ワカコに庸雄というヨリコの夫が登場し、点と点で描かれていた描写が線となっていく。ヨリコの控えめでありながら大胆な姿、ワカコの頼りない若さ、タカオの一途な情熱などが如実に丁寧に描かれていて、不倫という題材でありながらとても情熱的で上品だと受け止めた。人はなぜ行き止まりの道だと分かりながら進んでしまいたくなるのか。そこに何かがあると希望を抱いてしまうのだろうか。タカオと庸雄の絡み合いは思っていたのとは違う角度からでお見事であるが出来事には責任が起こるという不条理を描いたヒューマンドラマだった。
2023/02/17
koji
清張さんの恋愛小説ですが、その恋愛観には、暗い情念が横たわっています。例えば、石坂洋次郎(青い山脈、若い人)のように戦後民主主義の自由を謳歌するような個人単位の恋愛観は、本作では希望として語られていても(仕合わせな充実感を感じさせる輪香子、屈託ない輪香子の親友和子の描写)、根底は、日本の戦前の封建制度的歴史観の上に成り立った不幸、絶望、恨みによる悲劇的な結末です。ただ男女を対比すると違いを感じます。女は(良くも悪くも)強かで一直線です。一方男は弱く感傷的で従属的です。この辺り普遍性がありますね。傑作でした
2023/10/28
カタコッタ
やはり清張先生は凄かった。のめり込んで読み終えるとはこのことか。女性誌に連載した小説なのでこの様な恋愛小説なのでしょうが、当時のご婦人の心を鷲掴みにした事は間違いない。小野木検事の古代史好きといい、輪香子の名の由来といい、清張先生の好みが散りばめられている。頼子の姿形も清張先生好みでしょう。面白かった。
2024/05/18
感想・レビューをもっと見る