子盗り (文春文庫 う 17-1)
子盗り (文春文庫 う 17-1) / 感想・レビュー
siro
ちょっと時代遅れな話のような気もしますが、田舎のほうではまだある話なのかしら。望んでもなかなか子供が出来ない夫婦の失望感や哀しさ、周囲のプレッシャーからくる焦りなどがリアルで入り込んで読んだ。後半の展開には目が離せなくなりましたが、ラストは少し呆気なかったかも。子供を廻り狂気を纏っていく女性達が怖くて悲しい。
2013/10/23
エドワード
子盗り…「八日目の蝉」がまず思い浮かぶ。京都北部の雲ケ畑の旧家に嫁いだ美津子は、結婚13年、子供に恵まれない。姑や親戚の冷たい視線がつらい美津子は、ある策を思いつく。祇園のホステス、ひとみは妊娠に気づかず、中絶出来ない時期に入ってしまう。ままならぬ人生、子供の欲しい人間と、欲しくない人間の間にさす<魔>。美津子は晴れて長男・哲也を抱くが、その直後からかかる無言電話。美津子とひとみの理性と感情の揺れが率直に描かれ、先の見えない展開が実にスリリング。しかし底辺に流れるのは女たちの哀しみ。明るい終幕に救われる。
2018/05/22
柊子
私も子供がなかなか出来なかったから、気持ちはよく判る。若奥さんの気持ちももちろんだが、それ以上に、姑の気持ちや行動が理解できるし、よく判る。だから、この話はなおさら重く感じた。守りたかったのだろうなあ。息子夫婦を、家を、そして孫を。たとえ他人が産んだ子供であっても、ね。
2013/07/07
hit4papa
第19回(2002年)サントリーミステリ大賞・読者賞のダブル受賞作です。京都の旧家に嫁いだ、子宝に恵まれない女性を軸に展開する心理サスペンスです。登場する三人の女性の、それぞれの母性が怨念のようにうずまき、痛々しくも悲しい物語を形成していきます。心がささくれだってくる様がじりじりと伝わってくるのは、作者の文章力が高いからでしょうね。
たこやき
作品全体を通してのサプライズはないが、しかし、細かな仕掛けを色々と配し、最後まで飽きさせずに読ませる辺りは巧い。そして、美津子、潤子、ひとみ、三者の狂気と、そこを結びつける峰岸と、常に嫌な雰囲気が溢れ、三者が結びついての後半は非常にスリリングだった。ちょっとだけ、最後はアッサリした感じかな? でも、面白かった。
2010/06/13
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