アメリカン・デス・トリップ 下 (文春文庫 エ 4-14)
アメリカン・デス・トリップ 下 (文春文庫 エ 4-14) / 感想・レビュー
ずっきん
延々と急坂を昇る。そのピークから物語は轟音を立てながら滑り落ちる。ああ、そんなまさか。上巻の苦行の全てはこの疾走のためにあったとは。レトリック無しの単調な短文の繰り返しが、シーンを見事に切り取る。歴史の汚泥の中で蠢く悪党、ウォード、ピート、ジュニア。主役を張る三人の造形は最後まで破綻なく、だからこそ、行く末に怯え、戦慄する。プロットの緻密さに呪詛を吐く。読み心地はもう格闘技である。しばらくは何を読んでも薄く感じるんだろうな。だからこのまま次へ行く。わたしを撃ち抜いたあのモノローグに辿り着くために。
2021/02/25
Richard Thornburg
感想:★★★★ シリーズ第2弾下巻。 あくまで史実に基づいて緩急をつけながらクリッピングポイントを目指し、それまで水面下で動いていた謀略的な企てが圧倒的な破壊力を持って襲い掛かってくる。 主役格の人物たちは謀略の一端を担っているようでも、実際にはそんな時代の流れに飲み込まれていき、年老いていく・・・ 泥沼化していくベトナム戦争・・・そんな時代に起きるキング牧師とRFKの暗殺。 ラストではどうしようもなく重くて暗い暗黒的な雰囲気のまま終了・・・というよりは「アンダーワールドUSA」へと続く。
2021/06/27
藤月はな(灯れ松明の火)
体言止め、ラップ調にも読める語尾の韻踏み、文体の長さ調整による視覚的遊び。エルロイ文体の美学全開。ウェインは長年の想い人であった義母、ジャニスと結ばれたのにベトナム戦争に従軍していた時に裏で精製・売り流ししていたのが癌治療での痛み止めとして使われるモルヒネの精製法を少し、変えただけのヘロインだったなんて、なんて皮肉なんだろう。そしてFBI、CIA、キング牧師もメンバーとなった「巨大な兎」の正体の衝撃は忘れられそうにない。個人的に老害ぶりを晒すだけなのに偉ぶる男が憎くてたまらない私にとってラストにはスッキリ
2016/01/12
秋良
RFKを殺れ。キングを殺れ。清廉なボビーと善悪の狭間で苦しむウォード、そして気持ちいいくらい何でもやるピートが退場。ウェインとドワイトは続投。老い衰えてもまだまだ力を持ってるフーヴァーとヒューズが不気味。
2020/10/30
けろあっく
ちょっと間を置いて再読しようと思う、一度読んだだけでは、この小説の面白さを味わったとは言い難い、翻訳はともかく、訳者あとがきはエルロイを初めて読む人間にとっては役立たずだった
2013/10/26
感想・レビューをもっと見る