イッツ・オンリー・トーク (文春文庫 い 62-1)
イッツ・オンリー・トーク (文春文庫 い 62-1) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
絲山秋子のデビュー作にして、文学界新人賞受賞作。彼女はその3年後に芥川賞をとるが、毎年のように文学賞を受賞し新人作家としては実に華々しいスタートを切っていた。この作品は、解説を書いている書店員、上村祐子さん言うところの絲山B(精神的破綻者たちの物語)系列に属するもの。主人公の優子は躁鬱だし、彼女を取り巻く登場人物たちも全員が変わっている。なにしろ、EDの都議、欝病のヤクザ、元ヒモのボランティアに痴漢といった布陣。蒲田の空間の中で展開する孤独で奇妙でクールな物語―イッツ・オンリー・トーク(全てはムダ話)。
2013/01/20
おしゃべりメガネ
久しぶりの絲山さん作品で、一時期、読みやすさとボリュームの適度さにしっかりとハマッていた時期があり、手応えは確信しています。先日、こちらのレビューで見かけて、気になり手にとりましたが、期待以上にくいついてしまいました。表題作に出てくる人物はとにかく皆さん、破天荒?で笑わせてくれます。しかも、なんかほっこりといい人なのが読んでいて安心できます。しかし、個人的には併録されている『第7障害』が素晴らしかったです。とある出来事でココロに傷をおった主人公のゆっくりとした再生物語です。やっぱり人の支えって大切ですね。
2015/06/16
めろんラブ
絲山エキスが枯渇したので、デビュー作から読み返すことに。イッツ・オンリー・トーク、全てはムダ話さと蓮っ葉な切迫感が印象的な作品。ドライでクール、それでいて諦観しない人間観と詰め過ぎ勘弁の他者との距離感は、当時から健在だったと感慨深い。病を抱えつつ旺盛な創作活動を続ける絲山さん。どんなに愚かで醜かろうと本質から目を背けない覚悟と、何物にも寄り掛からない孤高、ダメなところに愛しさや可笑しみを見出すセンス・・・「処女作にはその作家の全てがある」、故に殊更いとおしい。
2013/10/28
酔拳
「イッツオンリートーク」は、うつ病の主人公と主人公を取り巻く人間関係を絶妙なユーモアで描いています。出てくる人が変な人が多く、奇異な世界に迷い込んだ感がありました。うつ は理解しようにもなかなか難しいという感想をもった。「第7障害」は馬の障害競技を趣味にもつ29歳ぐらいの女性が主人公です。こちらの方が、読後感がよかったです。30歳を目前にした女性の仕事観や友人関係をうまく描いています。いまの絲山さんの作品につながっている気がします。また、文庫の解説文を、ファンである書店員に依頼しているとこが斬新です。
2017/12/02
おくちゃん🍎柳緑花紅
絲山さんのデビュー作‼EDの議員、鬱病のヤクザ、会話の最後にウジュジュと気持ち悪く笑うバッハ、自殺未遂で職業ヒモのいとこは居候、そして痴漢。この痴漢にドキドキしてしまった私って。好きになる必要もないただ極上の快楽をくれる人。蒲田の町での出会いと別れを「ムダ話さ」と笑い飛ばすカッコ良さに痺れます。「第七障害」は篤が最高に良い‼世界の果てみたいな所と言う順子に、ここが世界の始まり、何度来ても昨日生まれたような感じがする。って私までドキドキして目を閉じて彼の次のアクションを待ってしまった。
2015/10/13
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