転がる香港に苔は生えない (文春文庫 ほ 11-2)
転がる香港に苔は生えない (文春文庫 ほ 11-2) / 感想・レビュー
ゆいまある
返還前後2年に渡り、香港に暮らして書かれたルポ。大陸からより良い暮らしを求めて命がけで密入国してくる人々。そしてより良い暮らしを求めて必死で海外に出ようとする人々。香港は逃げてきた人が住む街。そしてどこかへ逃げていく土地。永遠ではない。作者は日本に実家がありながら、貧困層が多く住む場所に部屋を借り、不幸な人を追う。安全な所から野次馬してるみたいで良い趣味じゃないなあと思って読んでいたが、作者自身がこの刺激的な香港の一部になりたいと焦がれていたんだろう。結局日本に帰るんだが、長い自分探しという印象。
2021/01/02
遥かなる想い
香港に行ったことがある人なら、面白いだろうが、とにかく長い。1998年香港返還の年に読めば また違った緊迫感があったろうに。大宅壮一ノンフィクション文学賞受賞作は、分量が 多いので、読むのに一苦労するものも多いですね。
2010/04/18
TATA
97年の返還前後に香港の下町で過ごした二年間を綴った作品。アヘン戦争以降英国の植民地としての奇妙な歴史故、常に混沌と共にあった香港。私も日本にいるときは出張で行くことも多かったけど、中環や金鐘といったオフィス街をちょろちょろしただけで、当然うわべしか見れなかったんだろうけども。混沌故の多様性こそが香港の本質であるとの筆者の言葉、いかなるものも包摂した香港の人達の強かさと逞しさもまた本質なのだろうから。
2021/08/01
梅干を食べながら散歩をするのが好き「寝物語」
のめり込むように読んだ。写真家でありノンフィクション作家である著者は、香港の中国返還(97年夏)を挟んだ時期に香港で2年間生活した。現地で出会った人々との交流の中で起きたエピソード、切なさを伴う別れが描かれている。香港の匂いが伝わってくるような内容だ。香港の喧騒の只中にあるアパートで暮らした著者が体験したカルチャーショックの数々は読み手にとっても驚くばかりである。一定の土地や立場に執着せず「発展」を目指し前進あるのみの香港の人々。日本人との思考の違いが露わになっている。香港に関心のある人は読んだ方がいい。
2021/01/12
James Hayashi
香港返還前後、2年間に渡り香港に住まれた著書の生活記。多くの友に囲まれ喧騒と活気にあふれる下町の香港らしい雰囲気が魅力的。単に取材でなく以前には留学もされており、本気で現地に溶け込もうとしている姿勢が伝わってきた。筆力も感じるし面白かったが、長いし何を伝えたかったのか捉えきれなかった。学生の頃数日ドミトリーに泊まったが、あの暑さと海と中華と街の臭いはあまり思い出したくはないなー。大宅壮一ノンフィクション賞受賞作。
2016/10/30
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