禁断の石油生成菌 ペトロバグ (文春文庫 た 50-3)
禁断の石油生成菌 ペトロバグ (文春文庫 た 50-3) / 感想・レビュー
背古巣
何年?、いや何十年?か前に、石炭を石油に変えるという技術について報道されたことがあったと思います。その技術に中でバクテリアを使うかどうかはわかりませんが、プラスチックをバクテリアで分解して石油に戻すという話もニュースで見た記憶があります。資源のない日本にとって、いや、世界にとって夢の技術ですね。その夢のバクテリアががこの物語の中で開発されます。当然利害関係で色々な人が暗躍します。また、そのバクテリアは当然人畜無害なわけはなく…。山内は悲しい過去を背負っていますが、相原もまた切ないですね。好物の分野のお話。
2020/09/10
まつうら
これまでに人類は、石油をめぐって数々の戦争を引き起こしている。そこに、石油を工業的に製造する微生物が現れたら? 本書はこんな前提のもとにスタートする。まずはこの微生物が空想の産物とは言えないことに驚く。なので、本書で描かれるアラブ諸国と石油メジャーの攻防は、起こりえる未来だと感じてゾッとした。さらに、ペトロバグが人間に強い毒性を持つとわかったとき、生化学兵器の影を見たようで再びゾッとした。これに気づいた山之内が、ペトロバグ研究をリセットしたがるのはわからなくもない。科学者もまた人間。業は深いのだ。
2022/01/13
タルシル📖ヨムノスキー
ある日科学者山之内が発見したバクテリア、通称〝ペトロバグ〟には石油を作り出す能力があった。これを知ったアメリカを中心とした石油会社やOPECを中心とした産油国は、山之内の暗殺とペトロバグの奪取に向け動き出す。しかしこの夢のようなペトロバグにはもう一つ恐ろしい力があり…。もちろんこんなバクテリアは実際に発見されてはいないが、様々な分野で研究者たちは寝食を忘れ研究に没頭し、その裏で、その研究結果で一儲けを企む者たちが、目を光らせていて、当たらずも遠からずのことは、私たちが知らないだけで結構行われていると思う。
2020/07/17
じお
★★★☆☆ 入院中に読了。石油を精製する新種のバクテリアを作り上げた為、世界中の関係機関から目をつけられる事になった科学者が主人公のSFサスペンスといったストーリー。暗い過去を背負った主人公・山ノ内のドラマや、そんな彼を愛する女性研究者とのラブロマンス。各国の陰謀が迫るサスペンスに、研究者の情熱、後半のアクション。中々の力作でした。
2022/04/09
HoneyBear
石油生成菌の培養が本当に実現したら大変動をもたらすだろう。新しいエネルギー源としての経済的、地政学的な影響は言わずもながら、生化学兵器として生命を脅かし得るという発想は凄く新鮮で刺激的だ。科学実験の緊張と苦労を巧く伝え(作者の体験も反映するだろう)、主人公や研究所会長の人物像を魅力的に描いてインパクトのある物語となっている。ただ、中東石油産出国やオイルメジャーの一次的な利害が絡むのは当然だが、彼らの事情や謀略まで描こうとするのは強引すぎたかな。サスペンスとしては少し中途半端か。十分に楽しめたけれど。
2014/08/06
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