邂逅の森 (文春文庫 く 29-1)
邂逅の森 (文春文庫 く 29-1) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
成功の第1はマタギという、私たちが朧気ながらにしか知らなかった世界を、小説という形にして開示して見せたことにある。マタギは私たちの祖先が定住し農耕生活を営むようになった弥生時代以降も、山で狩猟によって生計を営んできた人々である。この小説では、私たちがそれを異質なものとして排除するのではなく、別の世界の別の時間を生きる体験として定位させる。しかも、小説としての臨場感も上々である。そうでなければ、こうした作品の成功もないだろう。また、それはかつては山に神が存在し、今はもう失われたロマネスクな世界であった。
2019/10/22
ミカママ
冒頭のアオシシ(ニホンカモシカ)の狩猟シーンで、くじけそうになりながらも読み進む。そうか、これは山での狩猟を生業とする「マタギ」の物語。狩猟シーンは当たり前だし、殺戮には人々の暮らしがかかっており、そもそも命をいただくというのはこういうことなのだ、と自分を納得させて。惜しむらくは、男性にのみ都合のいいふたりの女性だが、これもまたマタギの性と生を語る上での重要なモチーフなのだろう。読者を打ちのめす壮大な背景、その筆力に圧倒されながら読了。今年のわたし的トップ10に間違いなく入るだろう。
2018/06/25
ehirano1
目次を捲って、解説があの田辺聖子さんということでこれはナニカアルに違いない、と。しかし、いきなりの方言連打は九州者の当方には難し過ぎてもどかしい。しかししかし、どんどんと内容に引き込まれてというか吸い込まれてというか、展開のタイミングが上手過ぎるのか、とにかく飽きませんでした。当にお気に入りの一冊との邂逅でした。
2019/04/20
遥かなる想い
第131回(平成16年度上半期) 直木賞受賞。 第17回(2004年) 山本周五郎賞受賞。とてつもなく、面白い本に出遭ったというのが読後の感想である。「マタギ」の世界を描きながら、底にあるのは、そこに生き抜く人間そのものであり、壮大なストーリーとなっている。 登場する女性もまた強くて存在感がある。
2010/06/02
さんつきくん
大正から昭和にかけての東北でマタギをする主人公。村を追われたり、炭鉱で働いたり。時代が時代だけに東北地方の貧しさだったり、特に登場人物達が織りなす深すぎる人情劇が強烈なインパクトを読む側に与える。主人公のすごい邂逅物語。女性の逞しさが目立つ作品。さすが直木賞・山本周五郎賞W受賞作品だ!
2013/01/15
感想・レビューをもっと見る