ケッヘル 下 (文春文庫 な 53-3)
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ケッヘル 下 (文春文庫 な 53-3) / 感想・レビュー
松本直哉
モーツァルトの曲が随所に引用されて、全編に彼の音楽が鳴り響く。ともに旅する音楽家の父による厳しい音楽教育、やがて父への反発から主人公が自分の音楽を見出してゆく過程は、レオポルトとヴォルフガング父子の生涯をなぞっているかのようだ。モーツァルトの音楽を愛する音楽学生どうしの切磋琢磨、そこから生れる愛憎が、一人の女性の人生を破滅させ、さらに陰惨な復讐劇を引き起こす成りゆきから、最後に謎が明かされるシャルトル大聖堂の場面まで一気に読ませる。音楽を愛することと、人間を愛することの深さと残酷さについて考えさせられる
2022/12/20
*maru*
鍵人、伽椰、アンナ。それぞれが背負ってきた宿命とその代償。過去から現在へ、長い回想を経てやがて同じ時を刻み始める3人。人を愛する気持ちは脆く儚く呆気なく消え去ってしまっても、憎しみや哀しみは硬いしこりとなって消える事はない。底無しの虚無感に苛まれながらも、それでもまた愛を求めてしまう。モーツァルト、セクシャルマイノリティ、過去、復讐。多くのキーワードが犇めき合う物語のラスト照らす希望の光。ミステリー要素も十分含まれているが、恋愛小説や復讐劇としての満足度が高い。モーツァルト買いに行こ。
2017/07/27
冬見
「互いを刺しあい傷つけあわずにはおかない、破滅の愛。一緒にいれば正気を失わずにはいられない、狂気の愛。」光が見えるラスト。どうか幸せになって。
2017/01/31
ゆいまある
3代続く愛の話。鍵人が時間軸の冒頭とラストにしか登場しないのが想像力を掻き立てられて良い。予想どおりアンナと恋に落ちたけど、今回は中山可穂お約束の甘い地獄が重すぎなくて、ミステリーとして楽しめた。辰巳はもっとぎっとんぎっとんにやられて欲しい。蟹沢君、もっとやっちゃって。丁度子供が受験生なので、この手の高校卒業して医学部行くのは無理だから、と、ツッコミながら読んだが、まあ突っ込みながら読むものでもないので辞めとく。ちょっとしか聴いてないけどモーツアルトに詳しくなった気分。
2018/06/10
かりあ
雰囲気も好き。文章も好き。舞台設定も大好き。だけど…いや、だからこそかな、どうしてもラストが解せないなぁってちょっと思っちゃった。すごくいろいろ詰まってて贅沢なんだけど、やや贅沢過ぎたかな。濃厚なチーズケーキの上に生クリームもカスタードクリームも、さらには南国の果物までついてきた感じ。それでも一つ一つの素材は逸品だから、夢中で食べちゃった。げふー。
2010/06/17
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