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木洩れ日に泳ぐ魚 (文春文庫 お 42-3)

木洩れ日に泳ぐ魚 (文春文庫 お 42-3)

木洩れ日に泳ぐ魚 (文春文庫 お 42-3)

作家
恩田陸
出版社
文藝春秋
発売日
2010-11-10
ISBN
9784167729035
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木洩れ日に泳ぐ魚 (文春文庫 お 42-3) / 感想・レビュー

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恩田さんの作品のミステリーは大どんでん返し的な結末ではないが終始次の展開に目が離せず途中でストップ出来ない面白さがあります。主人公の男女の目線が交互に語られる心理戦の描き方も良かったです。最初普通のカップルの別れ前夜の語り合う話、しかもどちらも相手が殺人を犯したと思っているという興味を引く話でしたが真実が出てくるたびに思いもよらぬ方向へゆるやかに転がっていった印象です。マンションの一室で語るだけの話なのに、山のシーンや過去のシーンがとても鮮明に思い浮かんでくるのは巧いなと思います。

2017/11/24

zero1

小説とは【小さな世界を説くこと】。ならばこんな作品があってもいい。別の道を歩む男女がアパートで朝まで語り合う。千浩と千明の視点が交互に描かれる。山で転落死した【あの男】はどちらかが殺した?やがて明かされる事実。二人の間にあるのは恋愛か?それとも【嬉しい】共犯?心理描写は読者の共感を得た?【過去が追いついてきた】【死は生の一部】(後述)は名言。「夜のピクニック」を読んだ方ならこの作品を理解するのは容易。作家が新たな世界に挑む時、読者はその挑戦をどう受け止めるか。批判も多いが、私は恩田の意欲を支持する。

2019/12/22

パトラッシュ

同棲していた男女が最後の夜に徹夜で語り合う物語と思いきや、恩田さんはそんなありきたりでは終わらせない。話すうちに共有していたはずの記憶に微妙な違和感が生じ、互いの出生や成長にまつわる秘密が次々と明らかになる。やがて相手が実父の死に関わっていたのではと疑っていたことがわかり、生きていくため守ってきた前提条件が暁に照らされて何の意味もなかったとわかり愕然とする場面に立ち会うのだ。たった一夜で登場人物が2人だけのドラマに人生を濃縮させる鮮やかなドラマは、文字通り熟練の筆と三一致の法則で展開する恋愛悲劇といえる。

2022/03/22

さてさて

登場人物の男女二人がこれまでの事ごとを、ああだ、こうだとひたすらに語り続ける一夜。前夜に見ていた景色が全く別物に変わって朝を迎えら衝撃の展開。破壊力の大きな事実を何故か上回る二人の勝手なああだ、こうだ、という推測・憶測に基づく何ら根拠のない空想がもたらす想定外のある意味残酷なまでの結末。一方で、二人以外の周囲の人や景色は何も変わる事なく、太陽もいつも通り顔を出す。変わったのはあくまで彼ら二人と、彼らに付き合って一晩を共にした我々読者の心持ちだけ。これぞ恩田ワールドの真骨頂という作品だったように思いました。

2021/01/03

風眠

引越し前夜のアパートの一室、荷物は既に運びだされている。明日の朝には別れてしまう男女。二人は兄弟かもしれない、父親を殺したのかもしれない、実は恋人関係でいても問題のない続柄かもしれない、父親の死因は事故だったのかもしれない・・・本当のところはどうだったのか明かされてはいない。そんな訳ありな二人が夜を徹して話している。二人の間には、探り合う心理と緊張感があり、その感情の動き方はとても演劇的な雰囲気がした。ラストの「朝というのは人を正気にさせ、すべてを日常に引き戻す。」という一文に、納得させられる読後だった。

2012/05/21

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