花柳界の記憶 芸者論 (文春文庫 い 75-1)
花柳界の記憶 芸者論 (文春文庫 い 75-1) / 感想・レビュー
ヒロミ
面白く読んだ。古代の巫女の話から、吉原が源氏物語に連なる王朝文化の再生装置であり神々の振る舞いを演じる場所であったという論の考察の深さには唸った。現在の娼妓ではない芸者は昭和も戦後になってからの話でそれまでは娼妓と芸者の二枚看板であった「不見転 みずてん」芸者も法の目をかいくぐり幅を利かせていたのだ。しかし色街が水の傍にあるのは古代の巫女たちから変わらないとは何やら因縁めいた話である。荷風や鏡花など近代文学における花柳界に興味がある方にもお勧めの書。硯友社散々な言われようですが。流麗な文章が心地よいです。
2016/07/09
ミエル
強烈な著者のキャラ、そのままの文体が微笑ましい。花街についての考察は地域によってばらつきがあるとのことなので今回は江戸東京のみ、というのも風呂敷を広げ過ぎなくて良い。ただ、それでも奥が深く、書ききれない部分が多かっただろうと推測する。古代からの巫女に始まるその系譜、女が唯一、男と対等に活躍できたこの職業は誇り高いものではないかと思う。日本人でも遊女と芸者を混同している人が多く、なんとも歯痒い。芸者が売るのは春ではなく芸ですよ、とぜひとも正しい理解が進むと良いのだけれど。
2018/11/20
もっか
芸者論というより芸者の歴史を書いた本。太古の巫女まで遡っちゃうのはちょっとびっくりした。少女の霊験あらたかなる信仰がかなり長い間続いていたのもびっくり。芸者の名前になってから春を売る売らないでお上との駆け引きがあったのもまた一興。遊女との線引きが芸者のプライドか。芸者=水商売と割り切れぬものを感じた。本物の芸者は廃らせてはならないとも。
2013/08/10
京香
卒論題材で選ばれる事の多い吉原・花魁とかを研究する際に読んでおきたい、読むと幅が広がるかもしれない本でした。遊女と芸者さんの区別がついていない人には必需品。語り口も、テレビでお見かけするまんまで、情報量が多い割には投げ出せずに読みきれます。芸者さんというと京都を思い浮かべますが、東京に目を向けた考察本が増えるのは、東京が大好きな私にとっては嬉しいです(笑)
2017/11/24
筋書屋虫六
適当な表現ではないかもしれませんが、読めば読むほど「素敵」な本だった。とても興味はあるけれど、ケチな田舎もんには垣間見ることもできない世界の一つに花柳界があります。芸者という職業やそれを生業として生きる女性たちへ向けられたまなざしが彼女たちと同じ場所にあり、優しくて偏見もなくて素晴らしい。吉原芸者カッコいい!垢抜けた歯切れの良い文体もそうとう好みです。芸者さん、生き残ってほしいです。
2016/04/30
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