世界クッキー (文春文庫 か 51-2)
世界クッキー (文春文庫 か 51-2) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
タイトルの『世界クッキー』は、あとがきによると「世界のほうも、クッキーのほうも、ここで隣あわせになるなんてことは、夢にも思ってなかったはず」として選ばれたらしい。すなわち、デペイズマンということになるが、本家ロートレアモンの「手術台(解剖台)の上でのミシンとこうもり傘の出会い」からはうんと卑近になるのは否めない。その代り可愛らしくはなるのだが。川上未映子のこのタイプのエッセイは初読だが、残念ながらここには『わたくし率…』の破壊的なパワーも、『乳と卵』の言葉の奔流のいずれをも見ることが出来ないのだ。
2013/09/07
ゴンゾウ@新潮部
川上さんが芥川賞を受賞した頃に書かれたエッセイ。独自の句点でつなぐ長い文章で受賞当時のことを淡々と綴られている。創作活動のこと、読書のことが興味深い。個人的には 「ほんよみあれこれ」がよかった。
2018/10/02
風眠
(再読)何度読んでも、斬新で独特でハッとさせられる文章。回りくどいようでいて、スパッと終わらせる語尾の潔さ。私には考えつかないような物の見かたや考えかた。それをとても素敵な文章で書き表す、川上未映子の感性がとても好きだ。「読む人と書いた人、そして真ん中にある文章の、このみっつにとって絶対的に美しい結ぼれの場所が気の遠くなるようなこの運動の途上にはきっとあって、それが見える。どんなことがあってもそこに行きたい」と川上未映子は書いている。うん大丈夫、ちゃんと結ばれました、私の膝の上で。こんこんと外は雪です。
2016/01/05
ゆりあす62
★★★☆☆ 作者31才~33才までのエッセイ。丁度芥川賞を受賞した頃でその時のことが詳しく書かれている。ハイテクのエレベーター内でぐずる甥っ子達を黙らせるくだりは笑えたが、オススメは…。
2018/09/08
ユメ
普段私は、自分の手の届く範囲にある本を読むことが多い。登場人物に感情移入してうんうんと頷けるような読書。それはとても楽しいことなのだが、私にとってこの本はもっと遠くにあり、書き手の存在の大きさ、そして読み手である自分のちっぽけさを突きつけられて、世界から置いてけぼりにされたような心細さや、これまで同じ人間として生きてきても気づきもしなかったようなことを知らされるどきどき、色々な感情を味わって遥かな気持ちになる、そんな体験だった。ページをめくるたびに言葉が目の前に降ってくるようで、それを浴びて圧倒された。
2016/05/07
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