ワシントン封印工作 (文春文庫 さ 43-3)
ワシントン封印工作 (文春文庫 さ 43-3) / 感想・レビュー
koba
★★★★☆
2019/03/27
まつうら
戦時三部作につながる四作目と期待して手に取ったが、これは別の作品だった。 作中でいちばん気になったのは、アイデンティティ拡散症候群のくだり。当時の下手くそな日本外交のやり方は、本当にこれで説明できるのだろうか?と思う。しかしその一方で、アメリカの外交もむごいものだ。資産凍結に石油禁輸ときたら、日本に死ねと言ってるのと同じなのはわかっているはず。そもそも、どうして日本の仏印進駐をそんなにやり玉にあげるのか? 自国のことを棚に上げて、出る杭を打とうとしているようにしか思えない。
2021/06/27
乱読999+α
太平洋戦争前夜の米国ワシントンDCにある日本大使館が舞台。戦争か和平かの瀬戸際で右往左往する日本人大使館員達。そして米国官僚のスパイ兼愛人の女。また、彼女と若き臨時大使館職員との恋の駆け引き等々は佐々木氏の第二次大戦三部作にも劣らない面白さだった。それにしても昔からの日本の外交音痴、情報分析能力の欠如。国益よりも省益、保身で動く官僚の無能さ。もう少し優秀な、イヤまともな外交官がいたら太平洋戦争は避けられたのでは、と思ってしまった。
2020/09/10
さっと
『ベルリン飛行指令』にはじまる、佐々木譲の第二次世界大戦秘史三部作に連なる作品ということで、たいそう期待しながら読んだのですが、日米開戦前夜のワシントンを舞台にした和平交渉、情報戦線に女スパイをめぐる恋愛模様が冗長に絡んできて正直退屈しました。戦争と和平がもたらす利益を計算して動くそれぞれの立場の思惑と、正史から見たら脇役である本編の主役たちの歴史への交わりと、開戦までのカウントダウンと、よくできた物語ではありますが、三部作の稀に見る緊張感、冒険譚、男臭さには及ぶべくもない。
2017/07/02
2ndkt
日米開戦前夜の日米交渉をよく調べた上での小説。現代を舞台にした小説は、ある程度自由に物語を展開できるが、歴史小説はある程度史実に即して物語を進めないといけない。米国務省高官とスパイとして日本大使館に送り込まれた日本人の父を持つ女性、日本大使館でアルバイトをすることになった日本人留学生の三角関係と開戦を阻止しようとする日米双方の尽力、この両方が飽きさせることなく、むしろ緊張感を高めながら、物語が進んでゆく。著者の構想力に脱帽。
2016/02/11
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