廃墟に乞う (文春文庫 さ 43-5)
廃墟に乞う (文春文庫 さ 43-5) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
休職中の刑事を主人公としたことによって、これまでの警察小説にはない新しい警察小説が生み出された。すなわち、主人公の仙道はあくまでも休職中であるがゆえに警察手帳が使えない。しかも、自分の所轄ではないところでの事件に、いわば部外者として首を突っ込むのである。つまり傍観者として事件に関わっていくのだ。本書は、推理の妙をではなく、ニセコをはじめとした北海道の風土の中に展開する事件と、それにまつわる人間の心の動きを、読者もまた一種の傍観者として眺めていく、そのような小説である。
2012/02/20
おしゃべりメガネ
北海道にゆかりのある佐々木譲先生の直木賞受賞作品です。正直、ここ最近の作品は読めていませんが、個人的にこの頃の作品群はやっぱり雰囲気がいいですね。ココロにキズを負った休職中の刑事「仙道」が北海道のあらゆる場所にて、それぞれに起きた事件を解決していく刑事小説として、とてもシンプルかつスタンダードな構成ですが、そういうストレートな感じがまた素晴らしいです。タイトルだけで既に雰囲気が漂うハードボイルドな感じも、他の作者さんにはなかなか出せない'味'なのかなと。自分を最後まで信じ、貫く生きざまにやられました。
2017/02/18
ehirano1
休職中の警官の活躍(?)を描くストーリーです。緩急があまりなく、淡々と進む辺りは物足りなさを感じるか渋さを感じるかは読者次第といったところではないでしょうか。
2019/03/09
yoshida
PTSDで休職中の刑事・仙道が非公式ながら様々な事件に関わる連作短編集。淡々と進む淡い内容。佐々木譲さんの直木賞受賞作品だが、恐らく他作品でも受賞出来た作家さんなのだ。最終話でPTSDになる原因が明かされる。相応のグロテスクさを感じる。とは言え、読者の予想を大きく越える衝撃ではないと言えよう。ある意味、想定内の内容ではある。物語にもう少し起伏をつければ印象も変わる短編集だと思う。長く積んでいる「太平洋戦争三部作」を読んでから、佐々木譲さんの作品を追いかけるか決めたい。一定の水準以上の作品で構成されている。
2018/10/25
射手座の天使あきちゃん
最近の残忍で陰惨な犯罪に直面すると警察官でもPTSDになるかもと納得してしまいますねぇ(>_<) そんなリハビリ休職中の刑事が地味ぃ~に事件解決の糸口を見つけ出す短編が6編、北海道の風と香りを感じさせる小説でした かる~い塩味って感じですかね(笑) 映画化するなら主演は柳葉俊郎さん、それとも織田裕二さん?(笑)
2012/12/08
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