四とそれ以上の国 (文春文庫 い 84-1)
四とそれ以上の国 (文春文庫 い 84-1) / 感想・レビュー
いたろう
全て漢字一文字のタイトル、香川の「塩」、愛媛から高知に越える「峠」、巡礼の「道」、鳴門の「渦」、徳島の「藍」。現実世界と異世界が入り混じる架空の四国を舞台にした短編集だが、作品によっては、異世界振りがあまりにシュールで、何かの暗喩なのか、寓意なのか、風刺なのか、理解が全然追いつかず、読み続けるのが辛い。そんな中で、日本人の血を1/4引くアメリカ人英語教師が、日本人の祖母を松山に見舞った後、思い立って、鉄道で高知に向かう「峠」が、ユーモアあり、内田百閒を思わせるマジックリアリズムありで、なかなか楽しませる。
2020/05/06
Rin
難しい。読んでる私もくるくる、くらくらとして何度も目を閉じて、本から視線を背けてしまった。混乱とは違うぐるぐるとした渦に呑み込まれそうな。これまでのいしい作品には感じなかった感覚。四国なんだけど、四国じゃない。ここなのか分からない。圧倒的な自然や不思議が迫ってくる。塩や道、峠も渦も藍が、今の私じゃ受け止めることのできない物語。身近にある自然がこんなにも膨れて、大きく感じたり。逆に藍が少し身近に感じたり。そして、渦だって実は身近にどこにでもある。くらくらしながらの読書でしたが、道と峠、渦が印象深かったです。
2017/07/29
毛利武良
☆☆☆☆ 近代文学史を少し知っていると文体からして楽しめるだろう。八雲、漱石、四国、お遍路、哲学、旅、空想が好きな人なら、それぞれの楽しみがあると思う。読み進めないと意味の分からない所も作者の仕掛けた読む楽しみ。子供にも読みやすい文体で大人向けの物語を上手に書く印象の強かった著者だが、違う方向で薀蓄と筆力を揮っている。
2014/09/06
きつね
久々にたのしい読書体験だった! なかなか人には薦められない作風だが……。一作読むごとに「わけわからんまま終わりよった。(ほっ)」となる。圧倒的に説明不足なのだが、見えたり触れたりするものはある。文章自体がもだえている。そのもどかしさが募ると発作的に博物学的ウンチクが始まる。自閉症者が発作的に口走るウンチク話のように、「引用」された言葉だから無矛盾で論理的なのだが、文脈として意味をなしていない、みょうな居心地の悪さがうまれる。ほかの部分の文章が破格であるだけに、整った部分の文章こそが奇妙な効果を生む。このウ
2014/06/20
行加
いしいさんの登場人物たちは、現実の「人間」のつもりで読み始めると、違和感が生じて来て、どうやら「ひと」のように考えたり動いたりはしてるものの、別の存在な気がしてきます。(^_^;) その世界を把握するまでがひと手間でした; 今回は更に物語も散文的な所があって、言葉を追っている内に話が終わってしまいました…;四国の方なら楽しめたかなあ… 「塩」と「藍」が分からないながらも好きでしたv
2015/12/04
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