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太陽の坐る場所 (文春文庫 つ 18-1)

太陽の坐る場所 (文春文庫 つ 18-1)

太陽の坐る場所 (文春文庫 つ 18-1)

作家
辻村深月
出版社
文藝春秋
発売日
2011-06-10
ISBN
9784167817015
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太陽の坐る場所 (文春文庫 つ 18-1) / 感想・レビュー

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ろくせい@やまもとかねよし

文字のパズルのよう。文字とイメージが整理されていく見事な描写。高校同窓会を舞台に、女優として活躍する同級生をめぐる。精神的成熟を遂げようとする多感な高校生。均一を志向する教育は、態度や発言のような暴力的力が実効支配する歪な社会が形成。この不安定な社会は、蟻の一穴で権力が激変。28歳の彼ら。人生の価値から他者と比較する偏重を払拭できない。容姿に執着し、女優を志す女性。高校時の恋愛に執着し、不倫する女性とクラス会を仕切る男性。世間の耳目を浴びたい執着を捨てきれない女性たち。仕様もないと捨てきれない切ない読後。

2021/01/24

遥かなる想い

辻村深月は過去のある時期を起点として、現在を描くのが本当に上手だと思う。この物語の起点は10年前の高校の体育館。クラス会での 再会をからませながら、そして本作では「キョウコ」という名前が大きな意味を持つ。かなり翻弄されてしまったのも事実だが、最後は一気に読んだ。

2011/07/30

yoshida

あまりにもグロテスクで、生々しく、リアルで緊張を強いる作品。高校の同級会をめぐり5人の語り部が物語を紡ぐ。私の、俺の、人生は本当はもっと違うのだ。同情を許さないプライドと過剰なまでの自意識が読んでいてヒリヒリ感じる。こんなはずではない自分。どの章にもどこか自分と共振する部分があり、読んでいて歯応えがある。名前のトリックが効果的に使われている。個人的には半田聡美の章に共振した。20台の頃に別の業界に転職したかった自分。しかし、結局今の会社に残った自分。貴恵の紗江子への優しさが良い。グロテスクで面白い名作。

2015/06/15

さてさて

『坐る』、日常使うことなどない漢字が書名に使われるこの作品。古事記の天照大神のエピソードを背景にするというなかなかに興味深いその内容。高等学校を卒業して、毎年のようにクラス会を開催し続けて早10年という五人に順に視点が移動していく中で、あの時代に未だ囚われた彼らの姿が自然と浮かび上がってきます。『私に言わせてもらえば、囚われているのはみんなの方よ。そして、あなたは特に囚われている』と語る今日子の言葉が示すもの。あの時代のが輝いていたからこそ、それをいつまでも守りたいという気持ちの裏返しなのかもしれません。

2021/02/07

にいにい

人には、それぞれ物語がある。主役は当然、本人。学生時代も現在も。でも、周りに認められ、見られ、幸せと思われたい。憧れられる太陽になり、それに相応しい居場所を確保したい。その欲求から逃れられない。そんな人々が解放される話。特別な事件が起きるわけではないが、深く、緊張感に満ちた展開。心動かされる。劣等感、嫉妬、自意識を突きつけられ、自分の思い出も痛くなる記述。縛られたままの彼らも一つのきっかけで一歩を踏み出せた。新しい場所・新しい価値はきちんとある。それが自ら輝く太陽となるもの。辻村さんの思いを感じる一冊。

2015/08/26

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