円朝の女 (文春文庫 ま 29-1)
円朝の女 (文春文庫 ま 29-1) / 感想・レビュー
greenish 🌿
幕末から明治にかけて落語界に大きな足跡を残した三遊亭圓朝。近代落語の祖と謳われた御仁を取り巻く5人の女性と時代を描く連作短編集 ---松井今朝子さんと言えば独特の”語り”文体。本作も圓朝の弟子・円八による語りが、その時代へ心地よく誘ってくれます。武家の娘・吉原の花魁・圓朝の子を成しながら女郎に身を落とした武家の女・圓朝の内儀になりながら子を成せなかった一流芸者・圓朝の子となった芸人の娘…これら時代の矜持を持った女性たちとの色恋を描きながら、圓朝という噺家の本質・魅力を浮き彫りにした筋立てはお見事でした!↓
2017/05/20
NAO
【『歴史・時代週間』参加】江戸末期から明治初期にかけて活躍し、『牡丹灯籠』や『真景累ヶ淵』などの怪談噺の作者でもある落語家・三遊亭円朝が関わった女たちを主人公とした、五つの話。五人の女性を通して、円朝の生きざまが描かれているのだが、時代は幕末から江戸へと大きく変動していく時期、円朝と女たちを描きながらも、その背景である世相もしっかり見えてくるところが興味深い。面白かったのは、吉原一ともなった花魁と円朝の関係を描いた『玄人の女』。洒脱で軽妙な語りの最後にぽろりとこぼれ出る花魁の寂しさに胸を打たれる。
2019/03/28
shizuka
落語の神様と言われている三遊亭圓朝。彼を取り巻いた5人の女たち。憧れのまま終わった女(ひと)もいれば、子をなしながらも結婚しなかった女もいる。結婚しても子ができなかった女もいる。圓朝の女性関係はそれなりに派手だったようだ。が、それよりも圓朝が生きていた時代の風俗、世相、庶民とハイクラスの生活様式が丁寧に書かれており、読んでいる時だけでも明治の地に降り立てた気分になれた。寄席・落語・噺家、最盛期はやはりこの時代だったんだろうな。芸人が最も芸人らしかった時代。巻末の小朝師匠と作者の対談もとてもためになった。
2019/08/24
fu
三遊亭円朝と、娘や妻を含む5人の女を描いた短編集。小朝との対談解説つき。「柳に締めた、鵜飼船の篝火を描いた染め絽の帯」「羊羹色に褪せた借り着の黒紋付き」「唐桟の乱堅縞に薄水色の襟をかけ、前髪に小さい蒔絵櫛」といった視覚に訴える描写が女性作家ならでは。ただし著者によれば、意識的に視覚描写を心がけたそうで、本来視覚描写より聴覚(口調)に強いこだわりがあるのだそう。音読すると一層面白いかもしれない。いずれにせよ、時代考証がしっかりした時代小説は読み応えがあって面白い。
2015/09/05
くみこ
大名人三遊亭円朝の生涯を、五人の女性との関わりから描いた作品。語り手にした円朝の元弟子が、軽妙な口調で物語を進めます。晩年は貧しくなったものの、地位も名誉も手にした円朝に比べて、女達には一様に哀愁が漂います。江戸から明治へ移り変わる混沌とした世の中、没落したお武家の子女も、花魁も芸者も、貰われた娘も、時代の中で揉みくちゃにされているよう。よく知らなかった円朝の人物像と、当時の風俗や人々の暮らしぶりを楽しく読んだのに、なぜか女達の泣き顔が強く印象に残りました。
2020/03/07
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