甘い罠 8つの短篇小説集 (文春文庫 え 10-2)
甘い罠 8つの短篇小説集 (文春文庫 え 10-2) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
8人の女性作家(芥川賞作家3人と直木賞作家5人)による短篇競作集。表題の『甘い罠』には、あまり意味はないが、アンソロジーならではの楽しみもある。その作家に対するトータルな評価とは別に、競作を楽しめる。今回のレースでは、江國香織がスタートからダッシュし、独走態勢のままゴールへといったところ。川上弘美は不調だ。ご本人もそれを自覚していて、もう「やぶれかぶれ」状態。もっとも、不調ながらも何とか格好をつけられるところは、さすがはプロ。小川洋子も生彩を欠いたまま。高樹のぶ子も健闘はするが、いかんせん作り過ぎだ。
2013/03/22
じいじ
名うての女流作家8人によるアンソロジーはイケますよ。その順列はともかく、私のベスト3は川上弘美、小池真理子、高樹のぶ子。「隔靴搔痒」のオトコを噛み砕いて、面白く理解させてくれた『天にまします吾らが父ヨ、…』は川上さんらしい作品。そして、他人を気にしないでマイペースの人生を…。達観した主人公の人生観が面白い、小池さんの『捨てる』。3つ目は、高樹さんの『夕日と珊瑚』。人間が幸福感を得られるのは、過去・未来があるから、認知症になると「今」だけの日々に…。とても身につまされる怖くて重い、読み応えのある話でした。
2022/01/25
りゅう☆
幻覚?女のトコに行った夫を待ってるけどイマイチよくわからなかった江國香織さん『峨』、心を開かない作家の巨人に通訳することで少し近づけたような小川洋子さん『巨人の接待』、ピュアな関係だった元カレとのその後の妄想&期待が膨らんだ川上弘美さん『天にまします吾らが父ヨ、世界人類ガ、幸福デ、ありますヨウニ』、人を家畜と扱う時代の話に怖さと喉の渇きを覚えた桐生夏生さん『告白』、夫に黙って出て行く小池真理子さん『捨てる』はこれからの不安あるもののスカッ。タッグを組んだ復讐劇が切なくも見事な高樹のぶ子さん『夕日と珊瑚』→
2017/10/22
papako
あまり読まない方達のアンソロジーで、高村薫目当てで。うーん、いまいち楽しめなかった。高橋のぶ子『夕陽と珊瑚』小川洋子『巨人の接待』高村薫『カワイイ、アナタ』が良かった。高村さんのはきっと合田が加納に送ったと思われる手紙で、そこに書かれるのはオヤジの妄想なんだけど、合田にもこういうところあったよな。とか思いながら読みました。そして、やはり私はこういう恋愛ものに興味がないんだな。と再認識。
2019/08/27
まこみん
感想書き忘れ。 高樹さんの「夕陽と珊瑚」が一番良かった。 老いても喪う事のない女の情念。最後に果たされる復讐。次に江國さんの「蛾」離婚を迫られた精神衰弱漂う主人公…と思わせてラストには…蛾とかたつむりが不気味。世にも奇妙な〜みたいな終わり方。桐野さんの「告白」は時代小説。ヤジローがあの場から開放されることは有るのか。最後の林さんの「リハーサル」は自惚れ中年女性の自己中な話としかみえず。
2016/05/19
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