笑い三年、泣き三月。 (文春文庫 き 33-2)
笑い三年、泣き三月。 (文春文庫 き 33-2) / 感想・レビュー
KAZOO
久しぶりに木内さんの小説を読みました。原田さんのように結構有名な人を主人公にした作品も好きなのですが、木内さんのように市井の人々の日常を面白おかしく描いた小説も大好きです。しかも終戦後の浅草ロックで生業を立てていたここに出てくる人々は本当に憎めない人物ばかりです。このような生活をしていた人々が数多くいたということも今では信じられないことです。
2019/07/18
はたっぴ
『茗荷谷の猫』で感じた伝統美を残しつつ、装丁の斬新さを裏切らない長編作品。戦後の浅草の劇場を舞台に、漫才芸人や踊り子達の共同生活が始まる。戦後のないない尽くしの日々、善造やふう子のように人の良さを惜しげもなく振りまく人とそれを毛嫌いしてバカにする人々。悪玉のような光秀も戦争を生き抜いた図太さを全開にして強烈な個性を発揮している。善玉の善造、ふう子もその心意気は全くぶれることがない。戦災孤児となった武雄を温かく見守る人々の不器用な愛情も微笑ましく感じるほどだった。未来を期待させる終わり方も良く大満足の一冊。
2018/03/24
naoっぴ
あー楽しかった!空襲で焼けた戦後の東京・浅草を舞台に、ミリオン座という小劇場を立ち上げ、お笑いとエロに奮闘し再生していく物語。のっけから滑稽な文章が次々繰り出され、木内昇さんはこんなものも書くんだという驚きと共にあまりの楽しさにすぐに物語に入り込んだ。何があろうと生き抜く力強さに元気づけられ、何度踏まれても立ち上がる勇気に胸震えた。キャラの滑稽さや間の取り方の可笑しさに笑っていると、不意打ちのように切ない感動がふってきて涙がこぼれてくるような、まさに笑ったり泣いたりの人情味溢れる喜劇。幸せな読書だった。
2017/07/09
nico🐬波待ち中
たっぷり笑ってたっぷり泣いた!表題の通り、人を泣かせることは簡単なのに笑わせることがこんなにも難しいなんて!戦後の浅草小劇場「ミリオン座」に、頓珍漢な万歳芸人、小生意気な戦災孤児、浅はかで口の悪い復員兵、自称財閥令嬢の踊り子…とバラエティに富んだ面々が集まった。嘘で周りを固め得体が知れない奴らだけれど、みんな劇場を盛り上げて食べていくのに必死だ。みんな戦死したのに何故自分だけ生き残ったのか…生きてる方が辛い…と時に落ち込むこともあるけれど、行くべき道を見つけたみんな!どうか笑って生き抜いていってほしい!
2017/03/06
じいじ
終戦で意気消沈する中を「元気を出せ!」と頑張る人たちを描いた物語です。舞台となる下町・浅草は、娯楽とやすらぎの街です。渥美清・ビートたけし…など人気喜劇役者を産み育てた生地でもあります。私も83年のあいだに何百回も訪れた大好きな街です。東洋で最初の地下鉄(現在の銀座線)は浅草⇔上野が開通したのもこの頃です。読み終えて、戦後の日本で知らなかったこと、忘れていたことを思い出させてくれました。
2024/04/20
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