新装版 雲奔る 小説・雲井龍雄 (文春文庫) (文春文庫 ふ 1-60)
新装版 雲奔る 小説・雲井龍雄 (文春文庫) (文春文庫 ふ 1-60) / 感想・レビュー
ふじさん
明治維新の激動期に討薩一筋に志士として生きた雲井龍雄の悲劇の生涯を描いた異色長編小説。藤沢周平の故郷から出た志士の清川八郎の存在は、彼の著「回天の門」を読んで知っていたが、雲井龍雄の存在は、この本を読むまで知らなかった。明治維新史に存在が隠くされ、彼が処刑された後は、彼の郷里の米沢では龍雄の名を口にすることを久しくタブーにしていたという。このことが、藤沢周平をしてこの作品を書く動機になったいう。彼がこの作品を書かなければ、雲井龍雄は歴史に埋もれたまま忘れられる存在だった。藤沢周平に感謝したい。
2022/08/05
優希
雲井龍雄なる人物を初めて知りました。薩摩を討つことのみを考え時代を走り抜いた志士なのですね。歴史に名を刻まなかった志士ですが、こうして語られることは意味があるのだと思います。
2023/02/11
kawa
藤沢周平記念館を訪ねて歴史小説分野作品ありというインフォメ、記念館展示の本作を鶴岡の古書店・阿部久書店で購入。主人公は、米沢藩の志士でアンチ薩摩で活動した雲井龍雄。ポピュラーな「たそがれ清兵衛」等と違った趣の骨太な伝記小説。エンタメ的な面白さがあるわけではなく、ある種読み辛いの作品なのだが、維新の世で歴史のスポットにも当たらず非業の死を遂げた雲井を知れただけでも貴重かつ満足。
2021/12/01
kawa
(再読)吉村昭氏「梅の刺青」で本書の主人公・雲井が梟首刑に処され、解剖のうえ小塚原刑場に捨てられたという衝撃的事実を知り再読。幕末、反薩摩の立場で長土同盟・公議政体を目指した雲井。明治の世になって時の政権から怨みを買ったのか、深く取り調べも行われず政府転覆の罪での梟首刑。当時の志士の考え、どちらが正しいかなどは判定できない。駒がどちらかに転ぶか、雲井が大久保利通だったかも知れない。歴史ドラマの非情と残酷さを考えさせられる作品だ。
2022/09/21
Gummo
幕末を駆け抜けた米沢藩士・雲井龍雄の短くも烈しい生涯を描いた歴史小説。「朝敵」側の人間だけにあまりその名を知られていない雲井龍雄。自分も今回初めてその名を知ったが、学に秀でていたがゆえに悲劇的な運命を招き寄せてしまった人という印象。この時代の悲劇的な人たちは皆そうだけど。小説としては淡白だけれど、この人の生涯を後世に書き残さんとする著者の意気込みは伝わってきた。★★★☆☆
2014/07/11
感想・レビューをもっと見る